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【拷問具時代】
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【指潰し】 はっきりと覚えている 鉄くずが、融かされ、型に流し込まれるのを 型から外され、冷やされ、整形され……。自分は、作られた そして、最初の仕事は……。盾の持ち主だった、その子だった 覚えている。忘れられない 自分の産声は、あの子の絶叫だった あの子が死ぬまで自分は外されなかった そして、次は、あの子の兄弟が順番に その次は、あの子の父親が その次は、母親が 祖母が、そして、彼の息子で、盾を受け継いだ祖父が 1人ずつ、順番に、わざわざ、生まれを説明されてから 死ぬまで、指を潰し続けた 自分は、もはや、盾とは真逆のものになり果てた ただ人を傷つけるだけのものになってしまった 自分はそれに苦しみ、けれど、歓喜していた ……或いはそれだけならば、まだ救いはあったかもしれない けれど、指を潰すことになった人々は…… 主に、女性や子どもが多かった その場所を、地獄とは、呼びたくない 地獄は、悪人が、生前の悪行から落ちる場所だから だから、悪人でも無い人々が、してもいない悪行を吐かされ それを、拷問官が笑って見るような場所が、地獄なわけはない 奴らは、拷問を生業としている一族らしかった 最も、拷問を娯楽代わりにしている一族と言った方が、正しいだろう かつては、闇に隠れた一族だったのが 一部の富裕層の趣味を満たすために、仕事を受けた結果、ああ成り果てたらしい 自分の扱いは、様々だった 丁寧に扱われたこともあったけど、それはどちらかと言えば、少数 適当に扱われた方が、多かった 肌が張り付くほど、極端に冷やされたこともあった 逆に、肌が焦げるほどに、極端に熱せられたこともあった 電極につながれて、電気を流されたこともあった 毒に浸され、或いは塗りたくられたことも多かった 毒代わりに、塩や古い酒に浸されたこともあった その時は、そのまま酒樽に放置されたことさえあった ……いっそそのまま、忘れてくれとも願っていた 時折、他の拷問具の声が聞こえることがあった 彼らは、皆、こう言っていた 『そんなに辛いならば、受け入れた方が良い』と そこに、自分を嘲るような意味は無かった 皆等しく、自分を心配していた けれど自分は、それが受け入れられなかった どうして、受け入れられようか 自分は、いつの間にか、怨念を纏うようになっていた 毎日のように扱われたから、それは確実に大きくなっていった 人の指を潰す度 人が血を流す度 人が叫び泣く度 怨念は、その力を増していった
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