PBWめも
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●桜舞う名湯とゾンビ按摩師 「お客さん凝ってるね」 「そうかい? いだだだだだ!」 ルキ・マーシトロン(🧟♂️・f24589)は宿の女将に話を通し、按摩師として温泉宿へと潜り込んだ。自分の身体すらバラバラにしてデッドマンと化したルキの医術知識をもってすれば素人相手に按摩師の真似事をするくらい朝飯前だった。 (痕もなし……この人もシロ) 患者の首元を見れば鉄の首輪をしているかどうかもすぐにわかる。 「風の噂で聞いたんだけど最近は首輪が流行ってるんだって?」 「首輪ぁ? 聞いたことねぇなぁ。先生はどこでそんなこと聞いたんだ?」 「どこだったかな……お客さんが言っていたんだったか……」 施術中の雑談で情報収集も欠かさない。が、今のところそれらしき情報は手に入っていなかった。 「首輪なんてしてたら風呂に入るとき邪魔でしょうがねぇよ」 「その時だけ外すとか?」 「俺ならそこまでして風呂にはいらないててててててっ! 腰っ! 腰が!」 確かにそこまでして温泉に入る方が珍しいだろう。逆に言えばここにいるということはそれ相応の理由があるということかもしれない。 「関節バキバキだよ」 「座り仕事だからなぁ……あ、そういえば」 「そういえば?」 「首輪は見てないけど首を隠してる?奴なら……」 首を隠す、となると包帯を巻いたりマフラーを巻いたりあれこれあるが普通は首を隠す必要はない。ここは温泉宿なのだからそれこそ薄着も多い。そんな中で首を隠しているとなると何らかの理由があるのだろう。本当に首を怪我しているのかもしれないがそれでも何の手掛かりもなく探し回るよりは幾分かはましになる。 「怪我でもしてるのかな」 「そうかもしれないたたたたたたたた!」 情報のお礼にルキは患者の身体が海老反りになるほど関節を極める。 「……ふふふ」 多少の痛みは伴うがこの肉体改造により患者はしばらく腰痛とおさらばできるハズ。多分。 「じっとしててね。動けなくなってもしらないよ」 「いてぇー!」 こうして按摩師に扮したルキにより新たな情報が転がり込んできた。 ●桜舞う名湯とそのその効能 「どうして温泉なのでしょう?」 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)の疑問は尤もな物。兵器と温泉がどう考えても結びつかない。つまり関係があるのは兵器の方ではなくその持ち主と考えるのが自然だろう。 「早く突き止めないと」 こうして摩那は行動を開始した。 関係者が黒い鉄の首輪をつけていて未だ見つかってないということはそれを何かしらの方法で隠している可能性が高い。 「あのー……ちょっと私首が痛いんですがここの温泉ってどんな効能なんですか?」 「はい? ああ、ここの温泉ですか。ここのお湯は筋肉痛や打ち身、関節痛なんかにもよく効きますよ」 摩那は湯治客を装い従業員に聞き込み調査。もしも関係者が首輪を隠しているというのならそれを誰か目撃しているはず。ならば見た目は湯治客を装っていると考えるのが自然だろう。 「そうなんですね。ならやっぱり私みたいな湯治客も多かったりするんですか?」 「はい、ありがたいことで贔屓にさせてもらっています。今日も何名かいらしている様ですね」 ビンゴ、首を隠しているかはわからないが摩那の読み通り湯治客は何名かここに訪れているらしい。ならばその中から首を隠している者を探せば関係者へと近づける。 「私みたいに首を痛めている人も多そうですね」 「そうですねぇ……この時期は特に多い気がします」 (特に多い……そうか、逆でしたか) 湯治客が多いということはそれだけ身体を痛めている人が多いということ。つまり首を包帯などで隠しても怪しまれる可能性が格段に減る。故に関係者たちはここを選んだということだろう。 (とはいえ首を隠している人を探せばいいのは変わりませんね) いる、ということがわかればそれで十分。聞き込みを続ければ関係者へと辿り着けるはず。 「いろいろありがとうございました。温泉を楽しもうと思います」 「はい、ゆっくりしていってくださいね」 こうして効能を聞き出した摩那により新たな情報が転がり込んできた。 桜舞う名湯と観光客? 「うーん……どうしようか」 グラッジ弾。アルビレオ・ゴードン(Nostallgia・f16391)はヒーローとしてそんなものを見過ごすことはできない。せっかく平和になったこの世界で再び争いを起こそうとする輩を放っておいてはヒーローとしての名が廃る。何ができるかはわからないが自身にできることをしようとこの温泉宿までやって来たアルビレオだったが……。 「困ったな……」 苦手な聞き込み調査にあと一歩が踏み出せず温泉街の出店の前でうろうろしていた。聞き込みをしなければいけないのは重々承知しているがアルビレオが覚悟を決めるにはもう少し時間が必要だった。 (温泉街で黒い鉄の首輪なんてしていたら目立つと思うけど……よし) うろうろすること数分。出店の店先にいたお客がいなくなったタイミングを見計らい、アルビレオは出店の店員に声をかける。 グラッジ弾という特大の異常。普段この街にいる者ならば些細な異常にも気がついているかもしれない。 「……ちょっといいですか?」 「あ、やっと決まったのお客さん。さっきからずっと店の前をうろちょろして」 どうやら店員の方もアルビレオに気がついていたらしい。と言っても買い物に悩む観光客だと思っているようだが。 「あ、うん。ずっと悩んでいたんだけどね。これをもらおうかな」 しかしお客と思われてしまってはアルビレオも何も買わないわけにはいかない。とりあえず目についたお守りを一つ買っておく。 「まいどありー」 「そういえば最近この辺りでなにか変わったことはないかな?」 「最近? んー……」 お守りを紙袋に詰めながら店員は数日間の記憶をたどっていく。 「いつも通りかな? この時期は湯治客で賑わう稼ぎ時だしね。あ、でも」 「でも?」 お守りの入った包みを受け取りながら何かを思い出した店員の言葉を待つアルビレオ。 「今年は首に包帯を巻いてる人が多いような……寝違えたのかな?」 「はは、そうかもしれないね」 おそらくその首に包帯を巻いた者たちの中に関係者がいるのだろう。その情報が手に入っただけでも十分である。 次なる情報を求めアルビレオは出店を後にした。 こうして観光客に扮したアルビレオにより新たな情報が転がり込んできた。
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