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半吸血鬼の行き当たりばったり物語
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・吸血鬼になっちゃった編 ランデルフ・ハスタルブメアは支配階級の生まれであったが、高いプライドに対して能力が凡的で、よくエリートな家族に「出来損ないやんけ!」と軽口を叩かれていた。 家族は愛を持って接しているつもりである。性格はエリートでなかったのだ。その為ランデルフは家族を嫌って家出し、その日の夕方にはお腹が空いて帰ってくる日々を繰り返していた。ガキだから許して。 そんなある日、太陽の光で干からび死にかけの吸血鬼と出会い、「どうせ死ぬならお前に力を託すわ」と言われて「よっしゃ来いや!」とオーケーしたのが十一歳の春である。 憑依する形(力のみ)で吸血鬼の力を得たランデルフは半吸血鬼となり、朝がしんどくなって引きこもりとなってしまう。 外を出歩かなくなった事に心配した家族により、「なんかウチの子が吸血鬼になったとか言ってるんだけどwww」と吹聴された結果討伐隊が結成、ハスタルブメア一家は命をとりとめたものの離散する事となった。 ・一人旅編 一人となったランデルフは夜は山を歩いて獣を狩り昼は討伐隊を恐れて草木の下に眠る日々を過ごしていた。 そんなある日、「しんどい言うても日中歩けるんやし、旅人のふりして出国したろ!」と一念発起。硬い果物を削り獣の血を水筒に町を行き、夜は衣服店に忍び込み服を新調し旅に出る。 幸い特に怪しまれる事もなく出国に成功。道程でほどほど行き倒れたが優しい人々により介抱され、「やっぱワイ愛されてる特別な存在なんや!」と勘違いが起きてしまう。 これが現在にも続く自己評価の高さに繋がった。まさに事故評価である。 ・居城入手編 その後は新天地において剣術大会に出場、吸血鬼の力で優勝賞金を荒稼ぎしていた。 育つに連れて美しい風貌となるランデルフに女子諸君は色づいたが、「べ、べつに女子なんて要らんし」とウブを拗らせた彼に「くっそチョロイやんけ!」と女子諸君は囲むようになる。 満更でもないランデルフであったがそれ以上の進展には居住する場所が必要であると気づく。 そこで貯め込んだお金で家を買おうとするも何れも金額が届かず、女の子とのイチャコラを諦められないランデルフの情熱に動かされ、遂に不動産屋が紹介したのは町の外れにある、ゾンビの住まうお城だった。 事故物件とかいうレベルじゃなかったが大きなお城の入手の為にルンルン気分でゾンビの討伐に向かったランデルフはあろうことかゾンビたちと心を通わせてしまう。 同時に吸血鬼の力のひとつである魅了を使用できることに気づき、ランデルフはゾンビらを執事として雇い城を復旧する事に。 同時に自らの吸血鬼としての力の可能性に大いに知識欲を刺激されたランデルフは研究を開始。さすがに人間の生き血はちょっと早いよねー? ということで今まで通り餌にもなる獣の血で研究を進めた。 奮闘、半人前の半吸血鬼編 吸血鬼としての力を覚醒させたランデルフは満を持して町ではなく、ひよって遠くの村にゾンビの皆さんを介護しながら遠征、吸血鬼として襲撃する。 とは言え攻撃するのは可哀想なので、襲撃に驚く村人たちに生き血を請求。大慌てで村長が生娘の一人の首をはねようとしたのでこちらも大慌てで止めて、村人たち数名から少量の血を集めて去って行った。 こいつくそよわ吸血鬼なんじゃね? と考えた村人は直ぐ様に討伐隊を編成、ランデルフを襲うが見事に返り討ちにあってしまう。 城に帰ったランデルフは人の血液から様々な力を発現、複雑な思考をする生物から得る血、細胞、情報を生物的、あるいは魔術的に吸収する事で自らを進化しうるのが吸血鬼であると気づき、それは命亡き存在からも可能であると知る。 一方、すっかり弱腰になった村人たちには協力を続けさせるべく、自らの知識研究による技術や様々な品を進呈し、良好な関係を築いていく。 そんな村の変化に気付いた町の人々は悪魔の村と称し今度は町の討伐隊が編成、その噂を聞き入れた町に向かった村人の話がランデルフにまで上がる事に。 「よっしゃ任しとき!」とランデルフは早速町ではなく国の王室、というか寝室に侵入、良好な関係であることを国王に直訴する。 驚いたのは国王でまさかのあっさり侵入に度肝を抜かれ、暗殺し放題のランデルフに恐怖した国王はランデルフと村には手出ししないことを約束し、襲撃を予定していた町にも深く釘を刺した。 これにより国王とのパイプを持ち、まれに国王からの依頼が村を通じてランデルフに届くという形になったのである。 ・王様になろうぜ編 王室とのパイプを使い書物を集め、思う存分知識欲を満たしていたランデルフ、その歳は四十を超えナイスミドルになった頃。 「ワイがこんな辺境で燻る必要ないんとちゃう?」と一念発起、再び国王の寝室に向かい「なんか国くれや!」と相談に向かう。 この頃にはたまにお忍びで飲んだりしていた二人であったが、「そんならこの国治めん?」「ええで!」というような冗談を言い合う間柄であった。 そこで国王はランデルフの城と面した一帯を、件の国を含め独立させる事を提案する。元々辺境にあり痩せ細った大地はランデルフの手腕により税を納めることが出来ていたのだが、他にもまだ似たような土地が多い。 その為、どうせならばとその手腕を認め、ランデルフに丸投げしたのである。 早速ランデルフは自らを国王とする『聖アサガシア王国』を建国、辺境の村々を改革し、隣国との協力もあり土地を肥えさせる事に成功したのだった。 やるやんランデルフ。 しかし。 ・スケルトンたちの謀反発生編 ゾンビからすっかりスケルトンになった執事たちは相変わらずランデルフの為に働いていた。 最近は国の王となり忙殺される彼の為にスケルトンたちは独自にホームビデオの撮影を敢行、最初の村から許可を得て縁深き人々の死体を集めてゾンビ化する。 初のゾンビ体験にワクワクドキドキの村人ゾンビたちと共に不死身ぶりを喜ぶモツを抜いては抜き取られのダンスパーティーを撮影、ランデルフへ視聴させた。 フレッシュなグロ映画を視聴させられたランデルフは卒倒、いや昏倒してしまう。 いきなり国王が倒れてしまったことで慌てたスケルトンたちはランデルフの代わりになるべく立ち回る。 なんだかんだ彼の手腕を一番そばで見ていたスケルトンたちはあっさりその国政をこなすことに成功。 国王がスケルトンに変わったものの、「そういや国王は吸血鬼とかいう噂あったわ」と考えた国民たちは特に気にしなかったようだ。 スケルトンたちは手早くランデルフに目覚めて貰うべく、お城の屋上で太陽の下に野晒しにした。 ・そして半世紀、女神の騎士編 ランデルフが目を覚ましたのは五十年の後のこと。 すっかり痩せ細り老人の姿となったランデルフがやっとの思いで城に戻ると、そこには王家を築いたスケルトンたちの姿があった。 謀反を起こされたのだと考えたランデルフは力の大半を失った今の状態では危険だと秘密裏に城から脱出しあっさり行き倒れることに。 その様子を見た双頭の女神ダリア・レイルカントは「おっ、ええのがおるやんけ」とランデルフを拾う。 力の大半を失ったランデルフに封印の指輪を設け、「ワイの騎士に選ばれたってことにしたろ」と隷属した。 騎士に選ばれたことに満足するランデルフだったが吸血鬼としての能力の復元も許されず、世界を脅かすオブリビオンを相手にのみ力の行使を許された。 そして、「最終的にはハンナ・レドウィッチとかいう魔女っ娘ぶっコロコロすればええで!」と言われ「ほならね、早速行かなあかんでしょ!」とハンナの元に向かうも彼女の棒術でフルボッコにされてしまう。魔法使え。 仕方ないのでランデルフは自らの剣術と、今のままでもハンナに対抗できるようになるべく鍛えようと考えたのであった。 ランデルフの猟兵としての生活が始まる。 ・双頭の女神ダリア・レイルカント 行き倒れの吸血鬼を「おっ、ええのがおるやんけ」と拾った不和と平穏を司る神様。 その二面性を双頭と表しているだけで、頭が二つある訳ではない。鏡の顔を持ち、写された者は真の姿を晒すと言う。 獅子と蛇を化身として利用するので、人間界ではこの二匹によって表される事が多いようだ。
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