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菓子パン化ピン『調理後』まとめ
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■四王天・燦 ● 「んふー、悪銭を巻き上げに行きますか♪」 四王天・燦(月夜の翼・f04448)はカフェーを前に嬉しそうには鼻息を鳴らす。猟兵である以前に盗賊である燦にとって悪徳商人は歓迎すべき存在である。 というのも悪徳商人は大概の場合は沢山のお宝を蓄えている上にどんなに盗んでも心が痛む事がないからだ。まさに燦にとって悪徳商人とは理想的な獲物であった。 今も燦の頭の中は悪徳商人が館に蓄えているであろうお宝の事で一杯だ。同時に燦は美術商の館が影朧の巣窟であり下手すると自身が美術品という名のお宝にされかねない事を完全に失念していた。 「さてさて、お宝を盗む為にもまずは館に招いて貰うぜ!」 燦はスキップと鼻歌を交えてカフェーへと入店した。 ● 「んぅ~♪ やっぱりクリームソーダは黒蜜抹茶が一番ね!」 カフェーに入店した燦は本を片手にクリームソーダを堪能していた。その服装は普段とは大きく異なっていた。 何時もの動きやすく隠密行動に適した服装ではなくサクラミラージュの一般的な女子高生が着るセーラー服を纏っているのだ。 今の燦は女子高生に扮していた。20歳な上に身長的な意味でも少し苦しい気がするが燦は女子高生のつもりなのだ。 「それにしても、想像以上に高いなぁ……。」」 そして、燦はクリームソーダを飲みながら近くの書店で調達したドールのカタログを呼んでいた。カタログにはドールを作る為に必要な材料と値段が列挙されている。 だが、材料の値段は想像以上に高く、燦は自然と物欲しげな表情をして無意識の内に髪を弄ってしまう。そんな燦の様子は美術商を誘い出すには十分であった。 「随分と悩んでいる様ですが何かありましたか?」 「……おじさん誰?」 「これは失礼。私はこういう者です。良ければ何を悩んでいるか聞かせてくれませんか?」 突然話しかけて来た美術商に燦は内心ほくそ笑みながらも訝し気な視線を向ける。美術商も慌てる事も無く燦に名刺を手渡すと自らの身分を明かした。 そして、燦はドールを作りたいが材料の資金が足りない事を美術商に告げた。すると美術商は笑みを深めると燦の耳元に口を寄せて囁き始める。 「成程、確かにドールの材料は思いの外高い物です。……そんな燦さんに耳寄りの話がありますよ。」 「耳寄りの話? 何々? 詳しく聞かせてよ。」 「では、店の奥で話をしましょうか。」 耳寄りな話に燦が食いつくと美術商は店員を呼び、手早く燦の頼んでいたクリームソーダの料金を肩代わりすると燦を店の奥へと招いた。 ● 「モデルって裸は嫌だよ。」 「ご安心をちゃんと担当する芸術家に裸は駄目である事は伝えますよ。なんなら、ドール作りを専門としている芸術家を紹介する事も出来ますよ。」 あくまでも女子高生として振舞う燦は不用意に裸を見せる気はない事を美術商に告げた。美術商も燦を安心させるかのようにその点で問題はない事を告げた。 更に美術商は燦に仕事の序でに館内に置かれたドールを筆頭とする美術品の数々を見ていく事を提案した。燦としては館を動き回る大義名分が出来るので喜んでその提案を受け入れた。 「それならお小遣い稼ぎに良いかな。折角だし美術の勉強もさせてもらっても良い?」 「勿論構いませんよ。館内には沢山の美術品が置かれていますから是非とも見ていってください。」 一通りの説明が終わった所で美術商は燦が武器の持ち込み防止の為に手荷物検査を求めた。 当然、燦は武器なんて持っていないと美術商の要求を突っぱねる。しかし、美術商も引き下がらずに拒むならばこの話はなかった事にするとまで言ってきた。 館に招いて貰えないと困る燦は渋々手荷物検査を容認した。 「見慣れないお札ですが何かのお守りでしょうか?」 手荷物の確認が始まって暫くして、美術商は燦が財布から取り出した四王稲荷符について聞いて来た。四王稲荷符について聞かれる事を想定してしていた燦は言い淀む事無く返答する。 「あぁ、これはアタシの地元の神社で扱っている金運のお守りですよ。」 「ふむ……このようなデザインのお守りは始めてみますね。実に興味深い。」 幸い、美術商に護符に関する知識はなかったようであっさりと騙されてくれた。だが、続けて行われた鞄の内容物確認で問題が起きる。 美術商が鞄に仕掛けられていた二重底に気づいてしまったのだ。そして、二重底に隠された小物類が次々と取り出されてゆく。 「申し訳ありませんがこれは置いていって頂いてもよろしいでしょうか?」 当然というべきか鍵束や電子制御装置等の盗賊の七つ道具が入ったポーチを置いていく事を求められてしまう。燦も館に招かれる事を拒まれるわけにはいかない為に美術商の求めに渋々応じた。 こうして燦は一部の装備品を置いていくことになりながらも館へと招かれるのであった。 ■音月・燈夏 大成功 ● 「影朧は兎も角……いえ、あまり良くはなさそうですが、その美術商とやらは後でお仕置きが必要ですね。」 音月・燈夏(麗耳の狐巫女・f16645)はカフェーの一席で客に声をかけて回る美術商を眺めながら呟いた。 どうも今回の依頼は本来なら猟兵が出るまでもない案件だったらしい。しかし、美術商が影朧達を匿った上に一般人を精力的に捧げてしまった為に猟兵が出向く事態に発展したという。 燈夏は影朧達を鎮め終えたら美術商をお仕置きする事を決意した。 「まずは館に潜入しないといけないのよね。武器は持ち込み禁止らしいですが……。」 燈夏は腰に身に着けた自身の武器を見る。巫女である燈夏の武器は霊験あらたかな祭具や御札の数々だ。 近代化が進んでいる上に桜の精という影朧を鎮める専門家と言える種族が存在するサクラミラージュでは巫女は戦闘職と認識されていない。 お陰で巫女の扱う祭具や御札もサクラミラージュの一般人には武器と認識されていなかった。燈夏としては武器を持ち込む為に頭を悩ませる必要がなくなったので嬉しい限りである。 「今回は文明の発展に感謝ですね。うん、ラムネ味も美味しいです。」 燈夏はカフェーで美術商を待つ最中の時間潰しとして注文していたクリームソーダを手にとった。クリームソーダと言えばメロンソーダの印象が強い燈夏であったが色んな味を選べるという事で今回はラムネ味注文していたのだ。 恐らくは他の飲み物との区別する為に薄い青色に染まったラムネを飲んでみれば燈夏の口の中に仄かなレモンの風味が広がる。更に溶けたバニラアイスと一緒に呑めばまろやかな甘さが加わった。 そして、クリームソーダを堪能する燈夏に美術商が声をかけてくる。それに燈夏が応じれば美術商は燈夏がクリームソーダを飲み終えるのに合わせて店の奥へと燈夏を案内した。 ● 「館内には色々な美術品が置かれている様ですが、それを見て回る事は出来ますか?」 「勿論できますよ。ただ、一部入室できない部屋もありますので、その時になったら改めて教えますね。」 個人的に美術品に興味のあった燈夏は説明が一段落着いた頃を狙い美術商に質問した。上手くいけば影朧と戦う上で有利になる手掛かりが得られるかもという打算もあった。 燈夏の質問に美術商は笑顔で返答した。入れない部屋というのは恐らくは帳簿などの書類を保管している部屋の事だろうか? 既に売り払われた一般人達の行方を追う手掛かりが得られるかもしれないと思った燈夏は後でこの情報を他の猟兵達と共有しようと考えた。 「武器の類は持っていないようですね。それでは館へとご案内しましょう。」 そして、手荷物の検査も特に問題なく通過した燈夏は影朧の巣くう館への潜入を無事に成功させるのであった。 ■在原・チェルノ大成功 ● 「人を人形に変えてしまうなんて許せません!」 今回の事件に関わる影朧達の能力を聞いた在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)は憤慨した。 影朧達も悲しい過去を抱えているのだろう。しかし、それが一般人を襲って良い理由にはならない。 しかも、今回の影朧達はただ傷つけるのではなく人形や石像などの物に変えて辱めるというではないか。人々の為に戦うチェルノがそんな影朧達の所業を許せるわけがなかった。 「流星忍姫チェルノ、参ります! ……ただし、影朧に気付かれない様にこっそりと、ね。」 チェルノは持ち前の忍術で素早く女学生に扮するとカフェーへと足を踏み入れた。 ● 「ピーチ味と思いましたがさくらんぼ味でしたの。」 チェルノは僅かに量の減ったピンク色のクリームソーダを眺めながら呟く。桃の濃厚な味と思いきやチェルノの舌に広がったのは甘酸っぱくも囁く様な味だ。 更にソフトクリームが溶ければピンク色のソーダが薄い桃色となり、さくらんぼの甘酸っぱさがバニラの甘さを更に引き立てた。 暫くしてクリームソーダを堪能するチェルノの前に美術商が近づいて来た。チェルノは目標の接近に女子高生としての振舞を続けながらも気を引き締めた。 「失礼、少しお話よろしいでしょうか?」 「大丈夫だけど、あたしに何か用があるの?」 美術商は何度目かも分からない説明を始めた。最初とは打って変わって美術品の素材……実際には美術商に破滅を齎す死神の勧誘に成功している為か期限が良い事が丸わかりだ。 そして、館に巣くう影朧と戦う事が目的のチェルノも美術商の話に食いついてゆく。 「あたし芸術には興味あるんですよ!先生ってどんな人なんです?」 「そうですね、私の館では5人の先生が作業をしているのですが、正直に言うと変わり者が多いですね。」 美術商曰く、館に巣くう5体いる影朧の内2体は各々の作業場での創作活動に専念しており外に出る事がないらしい。そして、1体が作業場を2か所要求し気分に応じて作業場を行き来しているという。 更に1体はとても活動的で作業場にいる事の方が珍しいそうだ。そして、最後の一体は酷く神経質で作業中は外出は愚か作業場に人が入る事を拒み、強引に入ろうとすれば酷い目に合うらしい。 チェルノは予想以上の収穫に内心ほくそ笑む。 「さて、申し訳ありませんがチェルノ様の手荷物を確認させて頂いてよろしいですか?」 そして、美術商はチェルノに武器の持ち込み禁止の話を始めた。 ● 「これは変わったデザインの懐中電灯ですね。」 美術商はスターボウスティンガーの見分をしながら唸る。フォースセイバーの一種であるスターボウスティンガーを十全に扱うには膨大なサイキックエナジーが必要となる武器だ。 僅かなサイキックエナジーしか持たない一般人がスイッチを押しても安全装置が働き仄かな光を灯す事しか出来ない。故に美術商にはスターボウスティンガーが変わったデザインの懐中電灯にしか見えなかった。 それは同じくサイキックエナジーを必要とするサイコキャノンでも同様だ。美術商がどれだけ弄っても電子音がなるばかり、美術商はサイコキャノンも女学生の間で流行している玩具と判断した。 「ガラスの手裏剣とは珍しいですね。」 そして、チェルノが次に見せるのはスターライト・スティレット、世にも珍しいガラスで出来た手裏剣だ。 チェルノは唯一明確に武器の形状をしているスターライト・スティレットでも問題なく持ち込めると考えていた。というのもガラスで出来ている時点で美術商は美術品と判断するに違いないからだ。 美術商が神経質な性格の持ち主であれば持込を断られるかもしれない。それでも既にスターボウスティンガーとサイコキャノンが持ち込める事が確定しているので駄目だった時には潔く諦めるつもりであった。 「……ふむ、これは大丈夫でしょう。ただ、これほどの美術品が壊れるといけないので包ませて頂きますね。」 果たして、スターボウ・スティンガーの持ち込みも許可された。美術商は鞄の中から梱包材を取り出すとスターボウ・スティンガーを丁重に包装した上でチェルノへと返却した。 無事に武器の持込に成功した上に影朧の有益な情報を得られたチェルノはほくほく顔で館へと招かれるのであった。 ■二尾・結 大成功 ● 「今回はどんなオブリビオンなのかしら? 出来れば同情の余地がない奴が来て欲しい所だけど……。」 ツインテールと八重歯がトレードマークな正義の改造人間、二尾・結(通りすがりのツインテール・f21193)は何時もの様にグリモア猟兵から事件の概要を聞いていた。 今回赴く世界であるサクラミラージュに現れるオブリビオンは影朧と呼ばれる傷つき虐げられた者達の成れの果てだ。スーパーヒーロである結としては虐げられた者達の成れの果てに攻撃されるのは兎も角、ぶっ飛ばすのは憚られた。 それでも概要を聞く限りでは件の影朧は既に多数の行方不明者を出しているという。一般人に被害を出している以上、一刻も早く影朧達をぶっ飛ばす……ではんく鎮めに行かなければならない。 神妙な顔つきで説明を聞く結出会ったがある時を境にその顔は段々と怒りに染まっていく。そして、説明が終わった直後に結の怒りは限界を迎えた。 「オブリビオンを利用して悪事を働くなんてとんでもない悪党じゃない!」 そう、今回の事件の元凶は影朧ではなく一般人である美術商だったのだ。本来なら大した被害もなく終わったであろう事件がその美術商のせいで甚大な被害をもたらしている。 結は今すぐにでもサクラミラージュに飛んで、元凶である美術商を懲らしめてやりたくなった。しかし、影朧達を鎮めるにはその美術商の協力が不可欠であるという。 「今すぐにでもぶっ飛ばしてやりたい! ……けど今は我慢して、館に招待してもらわないと。」 どうにか怒りを抑え平静を取り戻した結は館へ招いて貰う為に美術商と接触する為にサクラミラージュへと飛んだ。 ● 「そういえば、ハンバーガーが伝来したのって昭和に入ってからだったわね……。」 サクラミラージュに飛んだ結は無事に件のカフェーへの入店を果たした。そして、軽食を食べながら美術商を纏うと注文を使用とした所である事に気が付いた。 そう、日本にハンバーガーが伝来したのは昭和に入ってからなのだ。サクラミラージュは時代的には大正であるサクラミラージュの帝都にハンバーガーはまだ伝来していなかった。 仕方なく結はハンバーガーの代わりにサンドイッチを頼み、クリームソーダは当初の予定通りにコーラフロートを注文した。 暫くしてサンドイッチを食べ終え、コーラを飲んで一息ついた結の前に美術商が現れる。 「失礼、少しお話よろしいでしょうか?」 「……私に何か用?」 結は今回の事件の元凶である美術商を目の前にして不快感を隠しきれていなかった。 美術商は初対面の筈なのに何故か不快感を向けて来る結に顔を引きつらせる。それでも自身の目的を果たす為に結の態度を和らげる為の隙を探し始めた。 「さっきから私の事をじろじろ見て、用があるならさっさと話しなさいよ!」 当然、要件を話そうとせずにただ舐め回す様な視線を送って来る美術商に結の不快感は苛立ちへと変化してゆく。 そして、結の我慢が限界に達する直前になって美術商はとても丁重な手入れがされた結のツインテールに気が付いた。 「あ、あぁ! 申し訳ありません。あなたのツインテールがあまりに美しくてつい見とれてしまいました。」 「ふふん、そうでしょう!あなたなかなか見る目があるじゃない!」 果たして、積もり積もった不快感と苛立ちはツインテールを褒められる事によってあっさりと消し飛んだ。ツインテールに只ならぬ拘りを持つ結にとって自身のツインテールを褒められる事は何よりも嬉しかったのだ。 そして、どうにか結を鎮める事に成功した美術商は改めて当初の目的を話し始めた。 ● 「ツインテールが綺麗なあなたには是非とも美術品のモデルになって欲しいのです。勿論、相応の報酬は約束しますよ。」 「そうね、私以上にツインテールの似合うモデルはいないわ! 報酬も芸術家が最高の美術品を作る事で十分よ!」 ツインテールを攻めれば結が簡単に陥落する事を悟った美術商は結のツインテールを徹底的に褒めちぎった。事実、結の機嫌は先程のやり取りが嘘だったと思いたくなる程に良くなっていた。 調子に乗った美術商は更にツインテールを褒めながら色々なお願いを追加でしてゆく。 「結様は正しく選ばれしツインテールを持つお方、それ以外の装飾は不要だと私は思うのです。」 「そうね! ツインテールさえあれば私は誰にも負けないわ!」 「そう、ツインテールさえあれば結様は無敵です。ですから、危険物は全てここに置いてきて頂けませんか?」 「確かに思考のツインテールを持つ私に武器や防具なんて不要ね。」 あろう事か煽てられてすっかり調子に乗ってしまった結は元々置いていく予定であった『正義と蒼月の破刃剣』だけでなく『正義と勇気の防護外套』すら外してしまった。 美術商は結の武器と防具を丁重に受け取ると個室に備え付けられたロッカーへとそれを仕舞い鍵をかけた。結が影朧達に武器と防具なしで挑む事が確定した瞬間である。 「最後に結様、あなたのツインテールと美貌を十全に生かす為に是非ともヌードモデルをして頂きたいのですが、ご検討いただけないでしょうか?」 「勿論いいわよ!」 余りのツインテールの褒めっぷりに有頂天になった結は自身がヌードモデルをする事を快諾している事に気づかぬまま、館へと招かれるのであった。 ■晶津・紫と晶津・黄花 ● 猟兵達によってカフェーが盛況する中、1つのテーブルを囲む少女達がいた。 「ユカ姉、クリームソーダが来たデスよ。」 「鮮やかな紫色……なんだか、飲むのがもったいないね。」 同じアメトリン原石から生まれた姉妹のヤドリガミである晶津・紫(魔法戦士ジュエル・アメジスト・f26919)と晶津・黄花(魔法戦士ジュエル・シトリン・f26920)だ。 今回の事件では美術商が私腹を肥やす為に数多の一般人が美術品にされて売り捌かれているという。それを聞いた二人は今回の依頼に参加する事にした。 ヤドリガミとなる前、紫と黄花は宝石の指輪として様々な人の手を渡り歩いてきた。他者の手に渡るまでの経緯は黄花と紫とでほぼ真逆であるものの、所有者の都合に振り回される大変な日々であった。 ヤドリガミとなるまでまともな思考を持っていたかも怪しい二人ですらそう思うのだ。無理矢理美術品にされた一般人がそんな境遇に置かれれば大変を通り越して発狂してもおかしくはないだろう。 既に売り払われてしまった一般人を助ける事は難しいかもしれない。それでもこれ以上一般人が犠牲になる前に美術商と影朧を止めなければならないと二人はサクラミラージュへと飛んだ。 「……ん、美味しいデス♪ ユカ姉のも飲ませて欲しいデス! アタシのも飲んでみるデス?」 「う、うん…んきゅ、えへへ、おいしいね……♪」 ここまでは至極真面目に語ってきたものの、今の二人はカフェーでクリームソーダを堪能していた。自身の色に合わせるかのように紫はグレープ味を注文し黄花はレモン味を注文した。 そして、紫と黄花は互いのクリームソーダを代わる代わる飲んでゆく。その様はまさに仲の良い姉妹であり心なしか甘い空気すら漂っていた。 ● 「ユカ姉、レモン味は美味しいデスね。」 「グレープもいいお味だよ、オウカちゃん。」 仲睦まじくクリームソーダを分け合う紫と黄花。しかし、突如として二人の頭上に影が差した。 不思議に思った二人が上を見上げてみればそこには美術商が立っていた。クリームソーダに夢中になりすぎて二人は美術商の接近に気づかなかったのだ。 突然現れた美術商に紫は驚き咄嗟に黄花の後ろに隠れてしまう。黄花もそんな紫を庇う様に美術商の前に一ドルと美術商に問い掛けた。 「っ!? だ、誰かな?」 「アタシ達に何か用デショウカ?」 「……驚かせてしまったようですね。少しお話がしたいのですがよろしいでしょうか?」 美術商はそんな二人に苦笑しながらも優しい口調で美術品のモデルを探している事を話始めた。 「可愛いお二人ならきっと芸術家達も喜んでくれます。是非とも美術品のモデルになってくれませんか?」 「ふぇ? モ、モデル?! 可愛いってそんな……。」 「モデル、デスか。にゅふふ、アタシとユカ姉の可愛さなら仕方ないデスね。良いデスよ♪」 事件の元凶である美術商に紫は警戒を隠せずにいた。しかし、美術商が説明の最中に頻りに容姿を褒め称えられる内に顔を赤らめ次第に警戒を和らげてゆく。 だが、数多くの商人の手を渡り歩いてきた黄花はそれが美術商の策である事に早々に気が付き、気を良くしながらも警戒を緩める事はなかった。 それでも館に招いて貰う事が目的である以上、黄花も警戒を見せる事無く美術商の提案を受け入れた。 「それでは、奥の部屋で詳しくお話をしましょうか。」 美術商は提案を受け入れた二人に仕事の詳細を話す為にカフェー奥の個室へと案内するのであった。 ● 「さて、最後にお二人は武器に成りそうな物を持っていませんか?」 美術商によるモデルの仕事の打ち合わせは、途中お金にうるさい黄花が報酬についてごねるというトラブルこそ起きたが無事に終わった。 そして、美術商は申し訳なさそうに二人に武器の所持を確認してきた。事前に知らされていたとはいえ本当に美術商が聞いてきた事に二人は内心呆れた。 「いやいや、アタシ達まだ小学生デスよ? 武器何て持っているわけないデスよ。」 「お二人がそう思っていなくても実際は武器に成り得るものもそれなりにあるのですよ。決して壊したりしませんので確認だけでもさせてくれませんか?」 黄花は中学に入る前の子供が武器何て持っているわけがないと手荷物確認を断ろうとした。しかし、美術商はもっともな理由をつけてそれを却下した。 「仕方ないデスね……。」 「……近頃の子供はこんなものを持っている物なのでしょうか?」 これ以上食い下がれば仕事の話自体がなかった事にされかねないと考えた黄花は渋々ジュエル・スレッジを取り出すとテーブルの上へと置いた。 美術商は何処からともなく黄花の身の丈に迫る巨大ハンマーに顔を引き攣らせた。それでも直に立ち直ると他の荷物の確認を進めてゆく。 「流石にこれを武器何て言わないデスよね? これ、ワタシの家族がプレゼントしてくれた大切な物なんデスよ。」 「見た事もない貨幣ばかりですね。実に興味深い……。」 黄花はジュエル・スレッジを置いていく事になった事を内心悔みながらも魔術の知識のない物には只の貨幣でしかないエンハンスド・コインズの持ち込みは無事に成功した。 ● (レイスリッパーは普段影も形もないから大丈夫……。) 美術商と口論を繰り広げる黄花を傍目に紫は自身の背後を漂っているであろう[レイスリッパー]を見上げた。レイスリッパーは正面からの戦いが苦手な紫を守る沢山のガラスの刃だ。 レイスリッパーには特殊な仕掛けが施されており、専用の魔術を行使しない限り幽霊の如く影も形も存在しない。紫が自ら明かさない限り美術商にその存在がばれる事は無いのだ。 そうこうしている内に黄花の持ち物検査が終わったのか美術商は紫に視線を向いていた。レイスリッパーを除けば特に咎められないと考えていた紫は特に抵抗することなく持ち物を美術商へと晒してゆく。 だが、ジュエル・シクルートを見せた所で美術商は顔を顰めた。紫の器物の湛えた『呪いの指輪』の象徴とも言えるジュエル・シクルートから漂う不穏な気配を美術商に気取られたのだ。 「紫様、これは一体……?」 「これ? し、趣味のフルートだけど…ブキミ?」 ジュエル・シクルートを咎められると思わなかった紫は慌てながらもこれは楽器であると弁解する。しかし、ジュエル・シクルートはフルートというには聊か大きく美術商は半信半疑といった様子だ。 このままではジュエル・シクルートを置いていく事になるかもしれないと考えた紫が次に取った手は実際の演奏する事であった。 「……怪しいなら、一曲披露すればいいのかな。」 紫はジュエル・シクルートを構えると即興ながらも本格的な演奏を始める。普段なら魔力を籠める事によって精神攻撃が可能となるのだが、流石に今回はしない。 暫くして演奏が終われば美術商は紫に拍手をした。その眼差しからはジュエル・シクルートに対する疑いが晴れていた。 「いやはや、見事は演奏でした。確かにそれはフルートの様ですね、疑ってしまい申し訳ありませんでした。」 「……分かって貰えたなら大丈夫だよ。」 最後の最後で危うい所はあったものの、紫も無事に館へ武器を持ち込む事に成功するのであった。 ● 「それでは、お二人を館へと招かせて頂きます。つきましては私の手を握り目を瞑って頂けますか?」 「了解デスよ。さぁ、ユカ姉も手を握るデスよ。……ユカ姉?」 「うぅ……オウカちゃん……やっぱり怖いよ……。」 美術商は二人を館へ招く為に手を差し出した。この手を握り、目を瞑れば館へと入る事が出来るのだろう。 黄花は早々に美術商の手を握ったが紫はなかなか握ろうとしない。黄花が不思議そうに振り返ってみれば紫の顔は不安と恐怖に染まっていた。 紫は影朧の館へと突入する直前になって初めての戦いで自身が晒した醜態を思い出してしまったのだ。 あの時は妹のお陰で最悪の事態だけは避けられた。しかし、今回もそうなるとは限らず、嘗ての所有者達の様に黄花も危険に晒してしまうのではないかと考えてしまったのだ。 「……少し待ってて欲しいデスよ。」 黄花はそんな紫の様子に苦笑すると握っていた手を放し紫の元へと近づいてゆく。そして、小声で囁きながら紫の手を握った。 「……ユカ姉、大丈夫デス。何があってもアタシが守ってあげるデス。」 「オウカちゃん、ごめんね……信じてるんだよ。」 紫も黄花からの励ましに勇気を振り絞り、黄花の手をぎゅっと握ると仲良く美術商の元へと歩み始めた。 「待たせてすまなかったデスね。」 「……ごめんなさい。」 「いえいえ、時間はまだまだありますので大丈夫ですよ。」 紫と黄花は互いの手を握り合いながら、もう一方の手で美術商の手を握り、芽を瞑るのであった。
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