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【仮プレ】外宇宙への出航~See You Again
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● 「ぜぇぜぇ……どうにか床の汚れを落とす事が出来ました。」 陶芸家は刺客達により汚された作業場を清掃していた。作業場を汚すマーブル模様の液体は妙に滑り不用意に踏めばそれだけで転倒しかねない危険物だったのだ。 部屋中がそんな液体に塗れた状況では戦うどころではないと陶芸家は液体の除去を始めた。幸い、液体は炎による休息乾燥とろくろの高速回転を組み合わせる事により除去が可能であった。 「だけど、この方法では作品についた液体を落とせません。」 陶芸家は能力の酷使による疲労と引き換えに作業場の床から液体を除去する事には成功した。しかし、脆く高熱に弱い陶芸品にこの方法は使えず、液体を取る事汚れを落とす事は叶わなかった。 見る者が感銘を受け喜ぶ作品を作る事を至上とする陶芸家にとってそれは何よりも堪えた。或いはこれまでで一番のダメージと言えるかもしれない。 「少し見ない間に随分と随分と様変わりしましたね……。」 自身の作品が目も当てられぬ状態となった事に陶芸家が項垂れる中、雲雀が作業場へと入室した。 ● 「美術商の悪事は、これで終わり。」 雲雀はマーブル模様になった陶芸品の数々を見渡してゆく。その殆どからは魂が欠片も感じられない正真正銘只の陶芸品に成り果てている。 だが、一部の陶芸品からは微弱ではあるものの魂を感じ取る事が出来た。雲雀はのろのろと立ち上がった陶芸家へと視線を向けた。 「まだ助かる可能性の有る人を救出するために。陶芸家さん、あなたを討ちます!」 雲雀は陶芸家への宣言と共に橙と青、2つの亡霊ラムプを翳した。するとラムプの中から赤と青の2つの狐火『オトモ』が飛び出し雲雀の周囲を飛び回り始めた。 「オトモ! 部屋の物には触れないように陶芸家さんのみを攻撃して。あと、炎が飛んできたら、火力で押し返し極力陶器から離れた位置取りで戦って!」 「わざわざ向かって来るなんてあなた達から作品にして……熱っ!?」 雲雀の指示を受けた2体のオトモ達はある時に陶芸家の頭上、またある時は陶芸家の背後へと素早く移動しながら陶芸家へと突撃する。 陶芸家は突撃してくるオトモ達をその手で掴み自身の作品に変えようとする。しかし、実体を持たない狐火であるオトモ達を掴む事は叶わず逆にその手を焼いた。 それならばと陶芸家は雲雀を陶芸品に変えようと炎を放った。するとオトモ達が雲雀と陶芸家の炎の間に割り込み激しく燃え上がってゆく。 「火力勝負ならこっちが上です!」 「そんな、わたしの炎が食べられた!? こ、来ないでください! うわぁああああ!!」 実態を持たない存在同士である為か陶芸家の炎とオトモ達は互いに鬩ぎ合う。しかし、陶芸家の放つ炎が1つであるのに対しオトモ達は2体だ。 次第に陶芸家の炎は抑え込まれてゆきオトモ達に飲み込まれて消滅した。そして、炎を呑み込んだ2体のオトモ達は勢いそのままに陶芸家を包み込み陶芸家の絶叫が作業場に響き渡る。 暫くしてオトモ達が離れればそこには全身が黒く焼き焦げた陶芸家が横たわっていた。もはや焼死体同然の姿だが影朧となった為なのか陶芸家にはまだ息があった。 しかし、その四肢は半場炭化しており戦う事は愚か立ち上がる事すら叶わない。もはや陶芸家には対話以外に出来る事は残されてはいなかった。 「うぅ……。」 「完全に焼き尽くすつもりだったのですが……ここまで行けばもはや抵抗はできないでしょう。後はよろしくお願いします。」 「承りました。後は私に任せてください。」 目の前に横たわる陶芸家を雲雀は一瞥するとそのまま作業場を出てゆく。そんな雲雀と入れ替る様にして桜花が作業場へと入室した。 ● 「貴女自身が貴女を裏切り貶める…お可哀想に……。」 「……桜の精ですか……とうとう年貢の……納め時ですね……。」 桜花は作業場の隅に寄せられマーブル模様に染まった陶芸品とそれを作り上げた陶芸家へと悲痛な面持ちを向ける。既に満身創痍である陶芸家は桜花の姿を見て途切れ途切れに言葉を紡いでゆく。 その言葉は諦観に満ちており、戦意や逃げる意思は感じられなかった。 「陶芸家さん、貴女は何のために作品を作っていたのでしょうか。高額な品で虚栄心を満たすためですか?」 桜花は陶芸家へと問い掛ける。その眼差しは陶芸家が本当に転生するに値するか見定めるかのようであった。 対する陶芸家は暫し沈黙した後にぽつりと言葉を漏らした。 「……ウチはただ……人が喜ぶ作品を作りたかっただけや……。」 それは陶芸家の嘘偽りのない想いであった。しかし、その想いとは裏腹に陶芸家は喜ぶ人よりも悲しむ人の方が遥かに多い凶行に及んでいる。 「確かに命を使えば素晴らしい作品を作れるでしょう。でも、それは魂を篭める能力さえあれば誰でもできる事です。」 桜花は自身の言葉に身を震わせる陶芸家を傍目に改めて陶芸品を観察する。陶芸品はマーブル模様の液体により人の命によって齎されていた陶芸品としての生命力を筆頭とする要素が覆い隠されていた。 だが、それらの要素が覆い隠された事により作品に篭められた陶芸家自身の魂と想いの片鱗を桜花は感じ取った。それは人の魂が齎す要素を抜きにしても陶芸品が素晴らしいと思える程に強く純粋であった。 そして、陶芸家の作品の本当の良さを知った為に桜花は陶芸家が人の命を使い作品を作る事への無意味さが更に強まった。故に桜花は命を使い作品を作る事の愚かしさを説いてゆく。 「条件さえ整えば誰でも作れる作品なんて機械で何万と作れる大量製作品となんら変わりはありません。寧ろ、魂も込めず作れる大量製作品の方が悲しむ者を出さない分まだ価値があります。」 「……言ってくれるやないか……。」 「それに私にはあなたの作品が人の命を使わなくても十分に素晴らしい物に見えます。何故あなたは人の命を使う事に拘るようになったのですか?」 「……あなたは優しいのですね……だけど、殆どの人はわたしの作品に……喜ぶ程の価値はないって美術商は言っていました……。」 陶芸家の言葉に桜花は顔を顰めた。館内に潜んでいた影朧もその殆どが美術商に騙され凶行に及んでいたことが判明している。 それは目の前で横たわる陶芸家も例外ではなかったのだ。桜花は今は亡き美術商に対し怒りを抱きながらも陶芸家を転生へ導くための道筋が見いだす事に成功していた。 「……陶芸家さん、あなたは騙されています。」 「……なんやて?」 桜花は陶芸家と同じく美術商に匿われていた影朧達、その内の人形作りの少女が凶行に及んでいた理由を話した。転生をさせる為に美術商が凶行に及ばせていた事をしった陶芸家は自身の耳を疑った。 更に畳みかけるように桜花は美術商に託された人形達の末路を語ってゆく。それは陶芸家が美術商に抱いていた信用を打ち砕くには十分であった。 「これを聞いてもあなたは……生前の努力も技術も想いも、全て裏切る行為を続けたいと思いますか?」 「あはははは……ウチはとんだ道化やな……私腹を肥やさせる為に人の命を作品に変えていたなんて……笑い話にしかならんわ。」 陶芸家の乾いた笑い声が作業場に響き渡る。自身が凶行に及ぶ様になった理由が美術商の嘘である事を知った陶芸家の心は完全に折れていた。 沢山の人が喜ぶ作品を作る為に行っていた凶行がその実、美術商ただ一人を喜ばせる為の行為であったのだから当然と言えば当然だろう。 そんな陶芸家の姿を見た桜花はこれ以上精神的に痛めつける必要はないと判断し、陶芸家を転生させるべく最後の問い掛けをした。 「あなたに創作にかける想いがあるなら……願って下さい、転生を……。」 「沢山の人を手に掛けたわたしが転生なんて許せるのだろうか? まぁいい、もしもまたわたしが影朧として戻ってきたらその時はよろしくお願いします。」 桜花は鎮魂歌を歌いながら無数の花弁を陶芸家へと向かわせてゆく。桜の花弁は桜吹雪となり陶芸家を包み込むとその姿を覆い隠してゆく。 やがて陶芸家の姿が完全に覆い隠した桜吹雪が散るとその場に陶芸家の姿はなく、代わりに幾つかの桜の花弁が作業場の天井を突き抜け虚空へと消えていった。
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