PBWめも
檪 朱希 裏設定・過去等
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🦋蝶の傷跡について。 蝶の傷跡は、異能「破滅導く深淵の蝶」によるもの。 単体では非常に弱く、脅威にすらならないが、「宿主」に寄生することで徐々に真価を発揮する。 ただ、宿主は誰彼構わずというわけではなく、強い「心の傷」があり、一度でも世界に絶望したことがある場合に宿れる。 朱希の場合、「村人全員から存在を否定され、常に人として扱われない傷」から認められた。 ※ハサミに関するトラウマは、怪異が宿った後の後天的なもの。 🦋過去 私は生まれつき、右眼に赤い、赤い眼を持っていた。 髪も黒髪に赤が混じった、周りと違う黒と赤。 ──なんということだ…… ──悪魔だ……悪魔の子だ!! ──殺せ! 母親諸共殺してしまえば村は救われる! 元々、村では独自の思想を持って生きていた。 その人達にとって、突如として起きた困惑と動揺。 誰が言い始めたのか……悪魔、その一言から、私の人生は幕を開ける…… * ダークセイヴァー【星灯の村】。 この村では、子供は神から賜る神聖な存在であり、象徴として大切にされていた。 特に、村長の子供である私は……一層皆から期待を受けていた。 ──神より賜りし星、赤く染まる時。 ──世界は、破滅へと誘われるだろう。 いつからそんな話が浸透していたのか、今となっては分からない。 けれど、それが村の教会からの言い伝えだった。 母親は、私が産まれた時に殺され、 父親は、母が亡くなったことや、私が忌み子、悪魔の子とされたことから私を避け、心を病んでしまった。 幸いと言うべきか、子供である私は……言われはともかく神から授かったのだからと、赤子の頃は協会の人に渋々預けられて育つ。 立って歩けるようになってから、家に帰されて父親と再会するも、私を他人として、家から追い出し続けるようになった。時には強引に、暴力を振るって。 助けを求めた。周りの人々に。 けれど、誰も手を差し伸べるどころか、私を『存在しないもの』として見て見ぬふりをする。 泣き声が煩いと、石や棒を投げてくる人はいた。 なるべく泣かずに、勇気を出して話しかけてみることもした。けれど、返ってきたのは平手打ちや心無い言葉達。 『悪魔の子にやるものなんて! なんて忌々しい!』 『さっさとくたばっちまえ!』 徐々に衰弱していき、死を覚悟していた。 * そんなある時。 差し伸べられた手があった。 「君は、確かこの村の……」 白髪で細身の男性。特徴があるとするなら、白衣を来ている事、優しそうな目。私と違う、両目とも黒。 彼は、研究者だった。世界を脅かす吸血鬼やオブリビオンに対抗する力をダークセイヴァーで作り出そうとする、研究所の1人。 村の信仰や言い伝え等の噂を聞き、やってきたという。 何も言葉を発さない衰弱した私を見て、村の近くにある仮の研究施設へと保護。 父親代わりとして、暫くの間は寝る所や食事、ある程度の…それでいて前と違う温かな生活を送ることが出来た。 僅かな間の、幸せな時間。 ある日、その人からオブリビオンという化け物の事を聞かされ、その対抗手段としての力を得る手術を受けないか……と伝えられた。 ただ、その力は開発段階であることや、手術の時に命に関わる危険性もある。 私の意志を尊重するけれど、どうするか、と。 本当は、私にこんな事をさせたくないらしい。進言したのは、教会の人や私の父親だったという。 とても迷った。……でも。 こんな私でも、誰かの役に立てるかもしれない。 そう思って、強化人間になることにした。 それからは、村の近くに建てられた薄暗い施設に入ることになる。 助けてくれた研究員の人とは全然違う人達も沢山で、中には私を見て笑う人もいた。 可哀想に、と。 施設の子供部屋らしい所に行くと、私の他にも、一緒に来たのだろう子供達がいた。 でも、彼等は震えていた。聞けば、無理やり連れてこられたと言う。研究員の1人に。 後でその事を、助けてくれた人に話した。 その人はとても驚いて、分かったよ、子供達のケアと無理にしなくて良いようにすると約束してくれた。 それから、一週間程経ったある時。 子供達が段々と居なくなっていた。研究員の1人に子供達の居場所を聞くと、 怖いほどの笑顔を浮かべて、案内しようと言い出した。 薄暗い施設の、更に奥。 扉を開いた先、窓からは村の教会が見える部屋。 ちゃんと子供達がいた。……動かなくなっている、子供達が。 何でと聞くより先に、右首筋に何かを注射される。痛い。逃げようとする手を掴まれ、首輪をつけられて何かの機材の近くに連れていかれた。 何をするのだろう? よく見ると、傍らに何人か教会関係の人がいる。 怖い、誰か──! そう思っていた瞬間、勢いよく扉の開く音。勢いよく入って来た人が、今もなお笑みを浮かべる研究員に対して抗議している。 子供達になんてことを、とか、その子に投与するのは安全性を確かめてからと言ったはずだ、とか…… そう、私を助けてくれた研究員の人だ。 対して、笑顔の研究員は平然と言ってのける。 安全性は確かめた。その子供達も使って、教会の人達にもこの村の物語(おはなし)のことも聞いて私は理解したのだ、我々がこの村で見つけたものは、使いようによってオブリビオンを倒す術となると……。 助けてくれた人は、私を助けようと一目散に向かった。 けれど、教会の人達が押さえつける。 数人がかりで押さえつけられた研究員さんは、必ず助ける、と私に安心させようと必死で。 けれど、いつの間にか取り付けられた機械にスイッチが入って、首元から電流が流れ、全身が熱くなり、息苦しくなる。 視界は白くかすんで、けれど、だんだん『音』だけ聞こえてきて…… ――苦しい。憎い。悲しい。もう、嫌だ…… 誰かの、声…… ――どうして、こんなことになったの…… 女の子の、声……? 聞いていると、その子の感情と入り混じったようになる。 幻か、何か分からないけれど……目の前で【助けてくれた人】が【無残にハサミらしいもので刻まれて、赤い色を広げ、彼は悲痛な叫びをあげている】…… 嫌だ……いやだ…… ――「嫌……やめて、やめて!! お願いだから、もうやめて!! どうして! 何も悪いことなんてしていないのに!!」 私の声か、聞こえた少女の声で叫んでいるのかは分からない。 感情が、一緒になる。 胸が苦しい。叫ぶ喉が痛い。 ――「お願い!! 言うことを聞くから!! その人だけは殺さないで!!」 叫んでいるのかもわからないけれど、それも空しく視界が赤く染まっていく気がして。 ――カナシイ、ニクイ、ツライ、イタイ。 私じゃない"何か"も呟いている。 私もその感情でいっぱいだった。 ――ひとは、いつもそうだ。じぶんのために、たいせつなひとたちを、へいきでうばいさるんだ。 少女の声が響く。 その時、不意に視界がクリアになった。 しゃきん、ハサミのような音。 助けてくれた人は、赤く、朱く、あかく染まっていたところに、とどめと言わんばかりに首筋の……頸動脈を―― ――「やめてええええぇぇぇぇぇ!!!!!」 嫌だ。やめて。その『音』を。嫌だ。やめて。やめて。 わたしの、わたしのたいせつな。 「□□□、□□□……□□□□□……」 動かないはずのその人の『音』が、ノイズで聞こえた気がした。 ノイズが聞こえたと同時。 今度は、怒りが込み上げてきた。 ――ゆるさ、ない ――許さない……許さないゆるさないゆるさないユルサナイ…………!! そして、私の視界は暗転した。 *
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