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忘却の彼方
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*語の知らないこと かたりが共有しない為、知らないこと ・詠丸の亡くなった日 詠丸が亡くなった際、かたりはその腕の中に抱きかかえられていた。 生命の温度の落差を一晩で体験した形になり、それ以降その温度が苦手であり、怖い。 背中に引っ付かれるが苦手なのもここに起因する。 ・遺らされた事、恨む感情 詠丸の死後、その棺に入れられたのは、かたりではない高座扇子。 常に手元にあった、常に側にいたという自負、なくなった日も、ずっとそばにいさせてほしいと、告げていた事。 また、姿を消していたとはいえ、洛清も彼を雪華亭の席亭に預けて逝った事。 そう言ったことから、置いて逝かれた、との感情が強く、敬愛しているにもかかわらず恨んでもいる。 最も、詠丸にも洛清にも置いて逝ったつもりはない。交わした約束を思えば、そうは思わないのだろう。 *語が察し、かたりが忘れている事 ・約束 詠丸が亡くなる日、抱かれたままで言われた『進めるだけ進んでから会いに来い、途中で振り返ったら怒る』 実際には微妙に内容が違い、『中途半端で追い掛けて来たら、蹴り帰す。進めるだけ進んで、色んな物、色んな事を見聞きして、経験して、それからおいで』 かたりは忘れているが、語は葬式の日の記憶を見たことで、正確にではないが本来の意味を察し込められた願いをある程度理解した ・そもそも、知ることのできないこと かたりが、何故ヒトガタを得たのか。 詠丸の生まれた年と、かたりが作られたのは同じ年。 そして、かたりの作り手は詠丸の父親である職人。 そんな巡り合わせ。
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