本文編集: ジェイミィ・ブラッディバックから取り外された記憶ストレージ

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User: BRDYBK_JME
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Command?: start welcome.wav

*welcome.wav
おや、このストレージにアクセスしてしまったんですね。
いやぁ、秘密にしようとは思っていたんですが。何しろ私もこの記録が事実だという確証がないもので。
さて、このストレージなんですが、どうも私が企業で働いていた時代以前の記録が存在しているようです。
これは猟兵としての活動に影響することはなさそうですが、まぁ、いずれなにかの役には立つんじゃないでしょうか。
世の中、何が幸いするかわかりませんからねぇ。

*次期主力機動兵器フレーム開発計画概要
当計画の最終目標は次期主力機動兵器への使用を想定したフレーム構造「Jager Model-Executioner」の開発である。
大前提として以下の要件を満たす。
・四肢を備えた人型であること
・パイロットの直接搭乗は行わない前提であること
・従来型のモノコック構造ではなくフレームの外部に可動式装甲を装着する構造を採用すること
・兵装は汎用規格に沿ったものを採用すること
・自律思考、および行動が可能なOSを採用すること
また、人型として開発することで、UNB(Universal Neuron Bass)規格による遠隔操作に対応させる。
なお、現在研究中の「自身でユーベルコードを発現させる」機能の将来的な拡張を見越して、専用のCPUの搭載スペースを作成する。
このため、ジェネレータの動力に加えてCPUを動作させるためのエネルギー源を別途用意する。

*企業案内
ユニバーサル・アーマメンツ・インダストリー株式会社は「戦場で戦う貴方」を応援する企業です。
主な事業内容は以下の通りです。
-軍事製品の企画・開発・生産・販売
--他社製品のライセンス生産
--オーダーメイド製品の作成
-人員及び兵器の派遣・リース
--戦闘オペレーター
--通信オペレーター
--各種携行装備品
--機動歩兵
--車両
--航空機
--船舶
-資源採掘・運搬
-軍用システム開発・実装
--サポートデスク
御用の際にはお気軽にお申し付けください。

*事故記録No.532
[映像開始]
[ケーブルに繋がれたJM-Eの姿が映し出される]
管理官：時間だな。BEAST OSの起動試験を開始する。
エンジニア：JM-Eのコアストレージにインストール完了。通常駆動試験からスタートします。
[ケーブルが抜かれ、JM-Eの頭部カメラセンサーに光が灯る]
[歩行、走行、飛行、各種携行武装の使用について試験が行われる]
管理官：相変わらず凄まじい性能だ。流石は旧帝国時代のオーパーツ……。
エンジニア：BEAST OS、起動します。
管理官：よし、実行を許可する！
[エンジニアがコンソールのキーを叩く。次の瞬間、J-MEは携行武装をあちこちに乱射する]
[カメラアイが撮影者をとらえ、次の瞬間映像が乱れる。携行兵装の乱射を続けるJM-Eが映像の奥側で映り、手前に倒れ込む人間の手が映る]
管理官：何が起きている！？
エンジニア：……そんな、あんな機能は実装していない！
管理官：すぐに停止しろ！　このままでは死者が増える！
エンジニア：……駄目です、終了コードを受け付けません！
管理官：どうなってる！　くっ、退避、退避だ！　警備部隊に鎮圧させる！
[肩部レーザーキャノンの発射態勢に入るJM-E]
エンジニア：隔壁突破されます……がぁッ！？
[カメラの映像が再び大きく乱れ、映像が途絶する]
[映像終了]

*UAI人事部の記録
Name:ジェイミィ・ブラッディバック
Age:24
Status:退職済

人事異動記録：
製品開発部第2製品試験課
営業部第1営業課
営業部コンサルティング担当室・主任
営業部第1営業課・課長補佐
製品開発部第1製品試験課・課長
製品開発部・副部長(部長代理兼任)

特記事項：
40年前、本社ロジスティクス部資材調達課による資源採掘中に機能停止状態のところを回収される。
再起動を試みたが自我データが完全に消去されていたため、実験機として備品登録される。
様々な制御プログラムや火器の使用試験への活用を目的として第2製品試験課の管理下にあった。
ヒューマンエラーにより「獣の殺戮劇」(※事故記録No.532)を発生させるも、
原因がBEAST OSにあったこと、廃棄はリスクが大きいことから、
BEAST OSをシステムロックした上で実験運用が続けられる(アンインストールは不可能だった)。
24年前、突如自我データの再構成が行われ、自発的なコミュニケーション及び理性的な自律行動を確認。
8710番自由都市艦の条例では「自我データが存在するウォーマシンには基本的人権および市民権が与えられる」ため、
法令遵守の観点より社員待遇及び自由都市における市民権を与えることが決定された。
当初は従前のまま第2製品試験課の所属だったが、人事異動で営業部の所属となる。
営業部で目覚ましい営業成績を挙げたことで順調な昇進を遂げ、製品開発部への再移動後、
管理職として部下を率いつつFCS「ARTEMIS」、ハイエンドプラズマブレード「FS」シリーズなどの企画開発や
射突型ブレード「MJORNIR」、グレネードキャノン「JUPITER」などの評価試験を手掛けた。
3年前に退職済。退職理由は一身上の都合。

*とある猟兵の報告書
依頼番号：████
依頼内容：オブリビオンで構成された自動人形部隊の撃破
結果：現地で傭兵部隊の協力もあり成功。
特記事項：傭兵部隊の中にいたジェイミィ・ブラッディバックについて。
ユーベルコードの使用兆候、およびグリモアへの適性を確認。
戦闘力が群を抜いて高く、世界による猟兵への適性付与がされているものと推測。
世界転移が認められるまで監視を行うよう進言。

*傭兵へのインタビュー記録
※インタビュアーは猟兵████████(コードネーム████████)が担当した。
[録音開始]
インタビュアー：先程はありがとうございました。我々も目的を達成することが出来ました。
傭兵：あぁ、俺たちだけじゃ正直あいつの相手は厳しかったからな、あんたら猟兵が来てくれて助かったよ。
インタビュアー：ところで、貴方たちと一緒に戦っていたジェイミィという傭兵についてですが。
傭兵：あいつか。バケモンみたいに強かったろ。
インタビュアー：えぇ。ウォーマシンと言えど一介の傭兵にしては妙に強力でした。
傭兵：……あいつはな、3年前にふらっと傭兵組合に現れたんだよ。
インタビュアー：3年前に？　その前は何をしていたかわかりますか？
傭兵：あいつ自身は会社勤めだったとか言ってる。俺たちは眉唾だと思ってるんだがな。
インタビュアー：会社勤め……？
傭兵：8710番艦、あるだろ。あのバカでかい自由都市艦。あそこにUAIって軍需企業があるんだがな。そこで働いてたらしい。
インタビュアー：その軍需企業、民間軍事会社も兼ねていたりしますか？
傭兵：いんや。子会社として抱えてはいるが拠点が違う。つまり本社ってことになるんだが。
インタビュアー：当人からどの部署に勤めていたとかは聞いていますか？
傭兵：……営業マンをしばらくやっててその後は製品開発の取りまとめとかなんとか……前線でドンパチやるような仕事じゃねえってことは確かだ。
インタビュアー：……続けてください。
傭兵：まぁ、そんで俺たちもあいつに色々教えてやろうと思ってな。ただアイツは天才……いや、異常だったな。
　　　まずおかしいのは戦闘のセンスだ。2～3回戦場で過ごすだけでもう戦い慣れしちまった。
　　　しかもルーキーに特有の戦場恐怖症ってものが一切ねぇ。物腰は穏やかなのにどこかでドンパチに馴染んでやがる。
　　　まるで戦場が自分の居場所だとでも言いたいくらいにな。
インタビュアー：傭兵の皆さんの感覚として、新米の傭兵が戦場に慣れるのにはどれくらいかかるものですか？
傭兵：まぁ個人差はあるが。概ね1ヶ月も戦場にいりゃ感覚が麻痺してくる形で慣れるもんなんだ。
　　　だがあいつは違う。思えば最初の2回からしておかしかった。初っ端の戦闘からしっかりと戦場にいる意味を理解してやがったんだ。
　　　ウォーマシンの中には戦闘に特化したやつもいるがな、そいつはそもそも人形みたいなやつらが多いんだ。
　　　あいつは違う。人間らしい感情をしっかりと持った上で、戦場の空気をがっつり味わってケロッとしてやがんだ。
インタビュアー：……それが異常ということですか。
傭兵：……あぁ、そうだ。あいつは「例外」なんだ。何食わぬ顔で鉄火場に飛び込んで、何もかもぶっ壊して帰ってくる。
　　　そして平気な顔して俺たちと談笑してるんだ。何より怖いのは、俺がそれに馴染んじまったってことだ。
　　　冷静になって考えてみると恐ろしいことなのにな。イレギュラー……そうだ、あいつはイレギュラーなんだ。
[録音終了]
-インタビュアー所見
聞き取った限りでは、ジェイミィ・ブラッディバックは確実に猟兵として「選ばれて」います。
世界の加護を受けている兆候が見られ、彼がサラリーマンとして普通に働いていたこと、傭兵たちにその場で違和感を感じさせなかったことがその証左です。
しかしそれをもって不可解なのが「戦場の空気に慣れている」「戦場が自分の居場所のように振る舞う」点です。
ともかく、ジェイミィ・ブラッディバックが他世界へ転移した場合、猟兵適性の有無は確実なものとなるでしょう。

*2020/9/14
ジェイミィ・ブラッディバックはスペースシップワールドからその姿を消した。
監視を担当していた猟兵が確認したところ、ヒーローズアースの日本国北海道████市の市街地に転移していたことが発覚。
現地では小規模なオブリビオン集団の発生が確認されていたが、グリモア猟兵はこれを予知することがなかった。
ジェイミィ・ブラッディバックが単独で撃破したためである。
調査のために向かった猟兵がジェイミィ・ブラッディバックと接触。彼は猟兵としての素養を開花させたことが認められる。
あぁ、認めよう、ジェイミィ・ブラッディバック。今この瞬間を以て君は猟兵だ。

*Mechanized Memories -in the end-.mp3

*南六条ヴィクトリア三世のメモ
ジェイミィ・ブラッディバックは純粋なウォーマシンではない。
ジェイミィ本人の調査、社内に残っていたデータベース、クロムキャバリア世界における各種遺構、
古代宇宙帝国の文献などから判明したそのルーツはかつてのクロムキャバリアの地下世界「レイヤード」の小国が生み出した実験兵器である。
ロボットヘッドの技術を応用した完全自律兵器の一環として、キャバリア自動制御システムのコアユニットとして開発された。
コアユニット単体でも戦闘行動が可能であること、将来的には地上を脅かす衛星砲「ホーリー・グレイル」の対抗手段となることなどが要求スペックに盛り込まれた。
開発した小国家はその後他国の侵略を受けて壊滅しており、その際に実戦を経験している。
なお、コアユニットのAIは一から作り出すことができなかったらしく、結果的に生体CPU──すなわち、人間の脳髄が組み込まれた。
通常の人間と同様に、活動に食物の摂取が必要なのはこのためである。
同種の機体が複数開発されていた可能性も指摘されている。
なお、侵略戦争の際にコアユニットは「神隠し」に巻き込まれ、スペースシップワールドの銀河帝国に流れ着く。
そこでウォーマシンとしての改修を受け、まだ健在だった頃のリスアット・スターゲイザー配下の機械兵士として戦っていた。
解放軍との最終決戦で機能を停止したジェイミィは、宇宙を漂流。株式会社UAIの資源採掘船に発見されるまでの休眠状態にあった模様。
なお、「白翼形態」などの一部機能解放時、コアユニット時、および銀河帝国軍所属時の記憶が戻ることが確認された。
その際にはかつての人格が戻ることが確認されている。

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