PBWめも
お題:まるで散りゆく花弁のように
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「すごーい! 見て見て、満開だよ!」 そう言って駆け出す澪の後姿をゆっくりと追いかける。 その先にあるのは、視界を埋め尽くす程のピンクと蒼のコントラスト。 一年中美しい桜が咲き誇る世界、サクラミラージュ。 そのとある地域で名物となっているらしい美しい庭園。 地には勿忘草が鮮やかな青い絨毯を広げ、トンネルのように空を覆いつくす桜ははらりはらりと花弁を落とし、通路を淡色に染めていく。 花そのものにはさして興味も無い自分ですら思わず感嘆のため息を吐くような幻想的な景色の中、澪は両手を広げ、落ちてくる花びらを全身で受け止めながら円らな瞳を輝かせていた。 「カメラ持って来てっけど、一枚撮っとくか?」 「そうだね、折角だし。自撮り出来る?」 「任せとけ。あの辺でいいか?」 狭い通路を抜ければ休憩スポットなのだろう、ガーデンチェアの用意された少しだけ開けた広場のような場所に出る。 桜と勿忘草、どちらもが映るよう角度を調整し、二人寄り添いながらタイマー機能で一枚パシャリ。 日頃しっかりメンテナンスしていた甲斐あってか、写真はここ最近では一番と言っても差し支えないほどよく撮れていて、その出来に満足気な笑みを浮かべるものの、ふと横を見れば一緒に画面を覗き込んでいた筈の澪の表情が、どこか寂しそうに見えた気がして。 「どうした?」 「んーん、思い出が出来てよかったって思っただけ」 「思い出なんて」 いつでも作れんじゃん。 そう続けようとした言葉は、音にする事は出来なかった。 「夏輝君はさ、花言葉ってわかる?」 「……あんまり、詳しくねーから」 「じゃあ帰ったら調べてみてよ。勿忘草の。それと桜の、フランスでの花言葉」 「フランス?」 「僕もうちょっと奥の方まで見て来るね。しっかり目に焼き付けて来るんだ!」 くるりと踵を返す澪の背に思わず片手を伸ばすものの、小さな背はするりとすり抜け。 遠退いていく背に、けれど声をかける事も、追いかける事も出来なかった。 行き場を失った指先が代わりに掴んだ柔らかな花弁を、手のひらに収めてそっと見つめる。 脳裏を過った未来の予感に、ほんの少しだけ、胸が痛んだ。 ――まるで散りゆく花びらのように (今にも消えてしまいそうなほど、君の笑顔が、儚かったから) 花言葉:私を忘れないで
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