memo1 ―奪われたもの―
ガートルードにとって、財産とは人生そのものである。貨幣はもちろん、家族や友人という人脈に職責、見識などの経験。己が幸福だと感じられる情報を『刻逆』にて失ってしまった彼女は、父親に関する記憶が欠落してしまっていた。
男手ひとつで己を育ててくれた父親の名前も職業も、大好きな父が好んだ煙草の銘柄すら思い出せない。他人の記憶からも、父の存在は消えてしまっている様子。引っかかりを覚えたガートルードの頭の中は怒りの感情で支配されそうになったが、「何かあったら、黒蓮家を脅しなさい」という誰かの言葉によって、荒立つ波風は宥められた。
おそらくだが、父の言葉だろう。いつ己が手に持ったかもわからない日本刀だって、父の所有物だ。禁煙グッズを仕舞う煙草の空箱はきっと父が好んだ銘柄に違いない。
復讐者となった少女は、頭の中から抜け出した英雄、若しくは自由を意味する「ヘルト」を探している。
memo2 ―少女の手記―
私の父は未婚である。父はヘビースモーカーで、片親で育った私は大好きな父が吸う煙草の匂いが好きで、子供の頃から副流煙を浴びにいっては受動喫煙を行っていた。
成人するまで未成年喫煙をしていた私を見兼ねた父は禁煙に挑戦してはいたが、失敗していた。私は成人してから煙草を辞めたが、今度は禁煙グッズの虜になっている。
これらは全て、希望的な推測による妄言に過ぎない。だが、希望を持って何が悪い。動機づけが無ければ、生きてるとはいえまいよ。
memo0 ―手帳の裏表紙には、力強い筆圧で箇条書きがされている―
・ガートルードは私の名前である。これは父が愛した女が付けてくれたものだが、その女が母親であるかは定かではない。
・ヘルトルディスは、父が愛した女の名前である。名付け親と同一人物であるのかは不明だが、苗字がないと不便な為、ヘルトルディスを私の一時的家名とする。
・ヘルトは、英雄若しくは自由を意味する。勇者の意味も持つ。
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