人には過去がある。
しかしそれは消費され糧となり骸の海に還る。
この記録(レコード)が見つかったのは、偶然か、それとも――。
それは、とある国の物語。
そこには暴君とも言われる王様がいました。
王様には一人の娘がおり、大層溺愛していました。
しかし王様は暴君でした。
政治そっちのけで彼がしていたのは【虐殺】。
王の名を利用した処刑や戦争、無慈悲な殺人。
【存在を殺すこと】に、王は異常な快楽を感じていました。
ある日、王は妻と喧嘩になりました。
王はノータイムで妻を殺しました。
宰相とも喧嘩になりました。
王はノータイムで宰相を殺しました。
娘は母と宰相の冷たい姿にひどく悲しみました。
王は「これが大人になるということだ」と娘を教育しました。
娘は母を、宰相を愛していました。
特に宰相とは無二の友人ともいえました。
宰相が黒髪をなびかせ、共に森で語らう。
それは彼女には『王家』とは離れて語らえる幸せな時間でした。
でもそれが一瞬のうちに奪われました。
娘は王に、父に、復讐心を持ちました。
しかし幾度暗殺を試みても王は死にません。全て看破されます。
王はある時言いました。「お前はまだまだ子供だ。世間も何も知らぬ。それでは私を殺せん」
娘はある時言いました。「虫を殺すようにみんなを殺す、それが世間、それが大人になることというの?」
王は返します。「この世では数多の感情が蠢く。そして邪な感情が存在を堕落させる。そうなればもう裁くしかあるまい。ウイルスに侵された内臓は切り離さればならんのだ」
娘は言葉を噛みしめ、そして自らの命の危険を察しました。
そしてその日のうちに、娘は王のもとを脱出しました。
どこへ行くかも決めず、ただ今まで持った感情を封じ、『あの森で語らってた時の自分』で仮面をかぶり。
復讐心は消えません。しかし自分が死んでは意味がないのです。
そして王の言葉にも――【答え】を見つけられてないのです。
娘は旅します。【答え】を見つけに。
娘は交流したいのです。【答え】を探しに。
――而して、娘は――
――続く
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