●7thKING WAR⑳〜西のラスボスと四天王軍団っス
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=42567●キャラクター
サハリエ・ステーロ(時計ウサギの魔王・f37256)
●ユーベルコード
兎の魔王軍(ウサギマオウノハイカタチ)
●プレイング
フーハッハッハッ、君たちが『アイスエイジクイーン』の四天王達か
この僕、兎魔王サハリエ様が相手をしようじゃないか
さぁ出て来い最初の四天王!
何っ!君は中学の時まで近所に住んでた同級生の『ダークファイア・ヴァンパイア』君(愛称:ヴァン君)じゃないか
そうかアイスエイジクイーンの配下になってたんだね
あぁ、君に何度も保健室へ連れて行って貰った事は覚えているとも
しかし、じゃれ合いで死にかけるような僕はもう居ない、さっき猟兵になったからね
月頭に諦めたデビルキングの夢も再挑戦さ
そうだ、ここで僕が勝ったら配下になってくれないか
学年トップだった君の力はぜひ欲しい
(被弾を抑え戦闘を長引かせる)
魔王ほ僕が時間稼ぎとは思うまい
事前に呼んだ配下"9人"に移動要塞を造らせてたんだ
悪いが要塞に気を取られた隙にフィニッシュだ
ヴァン君は医務室へ運こぼう
さぁ急な連絡でも来てくれた優秀な配下達、敵をなぎ倒すぞ
そしてヴァン君には悪いがその力を貸して欲しい
【全力魔法】のメテオにヴァン君の【黒炎】属性を乗せ熱と質量で『絶晶』を打ち破る
『アイスエイジクイーン様、お気を確かに!?』
猟兵からのくすぐり攻撃を受けている最中の完全に無防備な状態で、悪戯トラップによる思わぬ痛手を受けたアイスエイジクイーン。UCの氷で出来た迷宮より勢いよく叩き出されると、もんどりを打ちながら地面を幾回か転げ回り、そして止まった。
そこへ駆け寄る者は、アイスエイジクイーン四天王軍団の中でも腹心に属する四天王『黒炎のダークファイア』であった。基本的に根が良すぎて騙されやすい悪魔たちであるが、彼は疑り深く懐疑的な性分から四天王ホイホイな氷の迷宮に入らずに居た。
『うぅ……どぉじで、ごう゛な゛る゛のですの゛ぉ゛』
黒炎のダークファイアが差し出した手を掴んで高慢ちきな氷の女王が地面に伏せていた顔を上げれば、氷のように冷たく鋭い目尻からは大粒の涙が込み上がっていて、自信に満ち溢れた顔は今にも泣きそうなまでにくしゃくしゃになっていた。魔界随一のニセ高飛車と讃えられるアイスエイジクイーンだが、そんな彼女もラスボスというデビルキングワールドでは高位種族にあたるがその本性はその辺の悪魔と対して変わらない。
いくら絶大な権力を有する為政者を演じたとしても、氷の仮面が剥がれればアイスエイジクイーンといえども悪ぶってる良い子ちゃんにしか過ぎないのだ。
『ほらほら、アイスエイジクイーン様。これでお鼻をチーンしてください、チーン』
「フーハッハッハッ、君が『アイスエイジクイーン』の四天王か」
ダークファイアがそのおどろおどろしい姿とは対象的な、きめ細かい刺繍のひらひらがあしらわれたレースのハンカチで涙と土で汚れた女王の顔を拭こうとした矢先に響く高らかな笑い声。
誰だと声のする方向へ振り向けば、そこにはこの機を待っていたとばかりにサハリエ・ステーロ(時計ウサギの魔王・f37256)が魔王笏をこちらに向けている。デビルキング法とは弱肉強食を是とする悪の法典。ならば、相手が弱り目に祟り目な今こそ、絶好の合法下剋上チャンスであるのだ。
「この僕、兎魔王サハリエ様が相手をしようじゃないか」
彼、いや男装の麗人な出で立ちの彼女である兎魔王サハリエは、由緒正しきラスボス魔王の一族出身。次世代魔王として、引いてはデビルキングワールドを述べる次代のデビルキングとして両親の期待と愛を一身に受けてきたサハリエであったが、その夢と野望は今回の「7thKING WAR」の特殊性で敢え無く断念せざるを得なかった。
とは言え、猟兵が次代7th KINGとなればデビルキングの座は空位のまま。であれば、絶望に打ちひしがれ、怒りと悲しみの中で猟兵へと覚醒を果たしたサハリエにもまだチャンスは残っている。残念なことに両親は一族悲願達成が叶わない現実を前にして、どこか邪が抜けてしまっている。これからは一族の使命に囚われず、今まで我慢していたやりたいことを好きに良いと言われて出奔したが、彼女がまずやりたいこと。
実は血が繋がっていない養子である自分を今まで育ててくれた両親への親孝行として、ステーロ一族の名を上げるべく西の大物ラスボスたるアイスエイジクイーンを討つことである。
『うぬぬ……なんて卑怯な。だが、四天王は相次いで居なくなってしまったが、まだこの黒炎のダークファイアは未だ健在である』
感情の切り替えがまだ終わっていないアイスエイジクイーンを護るべく、最後の四天王黒炎のダークファイアがマントを翻して兎魔王サハリエの前へと歩み出る。
そうこなくちゃと不敵な笑みを浮かべていたサハリエであったが、ふとダークファイアが手に持っているハンカチに目が止まった。何処かで見た特徴的な模様に、彼女の記憶が一気に蘇る。
「何っ! 君は中学の時まで近所に住んでた同級生の『ダークファイア・ヴァンパイア』君……ヴァン君じゃないか!? そうかアイスエイジクイーンの配下になってたんだね」
『えっ? もしかして、あのサーちゃん? どうしたのさ、こんなところに来て! ここはとても危ないんだよ!?』
まさか、まさかの幼なじみ同士の再会。アイスエイジクイーンがまだ立ち直っていないの良いことに、サハリエとダークファイアは互いに手を繋ぎ合って再会の喜びを分かち合う。思わず力を籠めてしまったダークファイアが、あっとした表情で思わず手を離してしまうが、サハリエはフフンと自慢気に鼻を鳴らした。
「君に何度も保健室へ連れて行って貰った事は覚えているとも。だが、じゃれ合いで死にかけるような僕はもう居ない。さっき猟兵になったからね?」
サハリエは兎魔王と名乗っているが、その実は時計ウサギである。なので、悪魔の子供同士で遊ぶ他愛無いじゃれ合い程度でも、同じ高さの猛獣を相手にしているようなもので何度も死にかけた。その度にダークファイアは保健室へと彼女を運んだり、入院先で両親と一緒に謝罪とお見舞いをしていたのも、今となっては良い思い出話である。
そんな竹馬の友であったふたりだが、両親の仕事の都合で引っ越してからはそれっきりであった。最初は手紙のやり取りをしていたが、互いに魔界高校を卒業して身の回りが忙しくなってからはそれっきりである。最後の手紙には、良い四天王就職先が見つかったとあったが、まさかそれがアイスエイジクイーンの四天王軍団だったとは。
「そうだ、ここで僕が勝ったら配下になってくれないか? 月頭に諦めたデビルキングの夢再挑戦に向けて、学年トップだった君の力はぜひ欲しい」
『で、でも、お取り立てて頂いたアイスエイジクイーン様のご恩を裏切る訳には……』
「そこを何とか。僕と君の仲じゃないか?」
離された手を再び両手で握り締め、お互いに顔がぶつかりそうな距離にまで詰め寄るサハリエ。夢と希望に満ち溢れた情熱あふれる目でじっと見つめられ、思わずダークファイアは美しく成長した幼なじみを異性として胸をときめかせてしまう。
だが、そんな無限と思われた感動の再会もここまでだ。ようやく気を持ち直したアイスエイジクイーンが立ち上がろうとしている。ハッとした様子で我に返った黒炎のダークファイアは、ついに迷いを断ち切って決断を下したのだ。
『アイスエイジクイーン様の目の前で、僕、いやこの黒炎のダークファイアを倒して!』
「……了解した。これで君も、一人一人が信頼出来る僕自慢の配下達に仲間入りさ」
流石に今仕えている主の前で裏切りに走るわけにはいかない。その為、デビルキングワールドでは一般的な考えである『強い奴がジャスティス』によって、形だけとは言えサエリエの前に敗れるのは妥協点としては最適解だ。
互いに取り合っていた手を話すと、彼女は魔王笏を黒炎のダークファイアに向けて派手な火球を放つ。当然ながら彼は避けるはずもなく、そんな裏取引を知る由もないアイスエイジクイーンとしては最後の四天王が猟兵に敗れてしまった様をまざまざと見せつけられることとなったのだ。
「ようやくお目覚めかな、アイスエイジクイーン? 君自慢の四天王は、戦利品として僕が頂いていくよ」
『お~っほっほっほっ! 盗人猛々しいとはこのことですわ』
再び傲慢に気丈にお嬢様仕草笑いをしてみせるアイスエイジクイーン。奪われたのならば奪い返すまでと言わんばかりの覇気を漂わせる中、何処からともなく出てきた兎魔王軍の配下らが黒炎のダークファイアことヴァン君を担架に乗せて運び出す。その向かった先には、今までになかった巨大な移動要塞がそびえている。
『な、なんですのあの要塞は!? あんなもの、先程までありませんでしたのに!』
「ああ、それかい? 君が氷の迷宮に入った隙を見て、僕自慢の配下たちに作らせたのだよ」
『わたくしの領内にそのような物を断りもなしに作るとは、失敬千万でございましてよ』
怒りを露わにしたアイスエイジクイーンが氷の自動鎧『絶晶(ぜっしょう)』を融解体へと変えさせ、その四肢を強化させる。その破壊力は西のラスボスと謂われるだけのものであり、振るわれた氷槍が大地をたやすく砕かせた。だが、その代償として動きは緩慢となってしまっており、時計ウサギとして悪魔と対等にまですばしっこかった彼女としてはスローすぎる攻撃である。優雅に身を翻して着地すると、天に向かい魔王笏を高らかに掲げさせた。
「この兎魔王の魔王笏には、僕が従える配下の力が宿っている。当然、先程君から奪った四天王の力もね? その力、とくとその身で味わうが良い!!」
膨大な魔力の奔流が周囲に渦巻くと、デビルキングワールドを覆っていた黒雲を突き抜けるモノが現れる。つい先程に兎魔王の軍門に下った黒炎のダークファイア、その二つ名通りに黒炎魔法を得意とする彼の力を借り受け、召喚した巨大隕石に黒々とした炎が纏っている。それは黒炎の尾を引きながら、アイスエイジクイーンへと目掛けて落下した。
『お~っほっほっほっ! たかが石ころひとつ、絶晶で押し返してあげましてよ!』
だが、アイスエイジクイーンのプライドが『避ける』という選択肢を許さなかった。強者故に強者の選択を取らざるを得ないが、それだけ彼女の自信の表れなのかもしれない。二対の両手を掲げ、氷河期魔法による瞬間冷却と同時に強化された絶晶の腕が隕石を押し留めて見せる。
(流石は、西のラスボス……やるね。けど、君より僕のほうがヴァン君の実力をよく知っているのだよ?)
魔王笏がより一層妖しく光り、アイスエイジクイーンの氷河期魔法で一時は衰えた黒炎が再び燃え盛り返していく。次第に高まる熱量を前に、永久に溶けないと讃えられた氷の鎧に亀裂が走リ始める。そして、ついには溶け出した絶晶と灼熱の隕石が反応しあって、水の瞬間的な蒸発による体積の増大……つまり蒸気爆発が発生した。
熱く湿った爆風がサハリエの服をなびかせ、周囲は白い霧で包まれる。彼女が魔法で風を拭き起こせばそれらは瞬時に晴れていき……爆心地となった中心部には自動鎧『絶晶』が無惨も砕かれたアイスエイジクイーンの姿があったのだった。
『……わたくしの負け、ですわね。お~っほっほっほっ!!』
奇跡的にも彼女の本体は無事で満身創痍とは言い難いが、既に魔力の大半を使い果たしたアイスエイジクイーン。自慢の四天王軍団も全て猟兵の前に敗れ去った現実を受け入れた彼女は、負け惜しみと言わんばかりの特徴的な高笑いを、何度も何度も悔し涙を流しながら奏でていたのであった。