今日の裏切り者はあの子。
悲鳴をあげて違うと叫んでるけど、みんなで相談してあの子が今日の裏切り者になった。
ドレイクのいる地下室の扉をみんなで閉じる。そう決めた。みんなであの子を裏切り者と決めたって分かるために。
お友達は二人とも真っ青。私もこのせり上がるものをこらえるのに必死。けど、大丈夫。みんなで決めたんだから。
あぁ、これできっと裏切り者をみんな見つけられた。
明日には帰れる。どこに帰るのか忘れてしまったけど帰れる。そうお友だちとひきつりながら無理矢理笑いあって眠りについた。笑顔が見れたんだから、きっと大丈夫。
聞こえてくる断末魔も咀嚼音も耳から追い出して眠りに堕ちる。

けど、龍は今日も裏切り者を全員見つけたとは言ってくれない。

その晩、みんなの一人が喰われた。
裏切り者のあの子はもういなかった。

みんなはあと何人いるかな。
裏切り者を見つけないと。
じゃないと、私が裏切り者にされちゃう。



最後に残ったのはお友だちと私。
もう一人いたお友だちは何日目かの朝に食べられちゃった。

ねぇ、お友達。
私と君しかいないなら、どっちかが裏切り者だよね。

なんでそんな悲しそうに笑うのかな。裏切り者が君なら君の勝ちなんだから笑ってほしいな。
ねぇ、最後に涙なんて見せないでよ。

ねぇ、貴女は生きてなんて、扉を閉じないでよ。


ねぇ………裏切り者はたぶん私だったんだから。私を突き出してよ……




よくぞ生き残った、なんて知らないよ。
このろくでなし。私のみんなを返せよ。
少しずつ異形になっていく私をみても最後まで信じてくれたお友達がいたんだよ。
だから、喰おうっていうなら、こっちが喰らい尽くしてやる。