PBWめも
時進まぬ狂気の牢獄 ヴィヴの出生 旅立ち編
作成日時: 2020/01/26 18:57:51
その女はいかような罪を犯したのか。否、犯されたに過ぎなかった。
その女はどこにでもいる凡庸で平凡でそして心の優しい村娘だった。
その世界は決してやさしい世界ではないがそれでも人はそこそこに溢れ、そして天災のような『なにか』にすり潰されていく。
その村に起きた悲劇も惨劇も気まぐれな『なにか』のうちの一人がたまたま食事と性処理をしに来ただけだった。
数か月後食事の後に残されたものは犯され身重となった女と瓦礫と血だまり。そしてそれらを最初に見つけた仮面をつけた不気味な一団。
彼女の悲劇は止まらなかった、むしろ加速していった。半人半魔を宿した穢れた女は手足をもがれ舌を抜かれようやく目玉を焼かれ、産まれた我が子を抱くことも見ることも、語り掛けることすらなく生きたまま犬に食われて死んだ。
産まれた赤子に名は無かった、人として扱われてないので当然である。この監獄、あるいは実験棟にあまたあるモルモットの一つ。それが彼女だった。
しかし実験動物が増えるにつれ必然的に『アレ』や『ソレ』とは言われなくなった。Vの4号、それが彼女。
生きた半人半魔のサンプルは少なく、反面死んだ半人半魔のサンプルは多かった。彼女の役割は投薬、採血、痛覚実験が多くふんだんに薬をつかわれ、その分血を抜かれ、針や杭で体を貫かれた。時折生きたまま解剖され縫い直されたりもした。
職員の中には彼女たちを殴り蹴り憂さを晴らすもの、反対になぜか武術を教える変人、壁のような固形食に水と言う食生活を憐れみミルクをこっそり分けるもの、とにかくいろいろ居た。
実験動物たちも食事や運動で見る限り種族、人種、年齢を問わずとにかくいろいろ見かけたがすれ違う程度だったのでついにどういう連中なのかは分からなかったが何をされているのかは何となく分かった。
殆どは虚無と苦痛で構成された毎日だったがVの4号にはそれが普通の日常でこのまま死ぬまで檻の中なのだと届かぬ星を見上げて手を伸ばし諦める、外には出れぬのだと。
しかし日常はあっけなく監獄ごと崩れ去る、なにせ国ごと滅んだのだから。隣国との戦争か、『なにか』がやって来たのか、クーデターなのかは分からない。
最終的に残ったのは発育の悪い哀れな実験体と血だまりと瓦礫の山、原形を残した死体と、原形の無い死体。
運の無さを憐れんだのか見覚えのある死体に手を伸ばすと原型の残した4体が動き出す。不思議に思ったが彼女にはどうでもいいことだった。
その時彼女にとって大事なことは、産まれて初めての自由とあの星に手が届くのか?それ以外は何も気にならなかったのだ。
そして彼女はボロキレの服で自分所属と認識番号だけが書かれたドックタグを外しもせず動く死体と共に瓦礫の山───かつてクロックロック実験監獄と言われた場所を後にしたのだった。
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2020/01/26 18:57:51
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2020/01/26 18:57:51
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