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2 | 2 | 日記…を書くのは正直得意ではない。 |
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3 | 3 | だが、今の状況を整理するためには必要かとも思ったので書くことにした。 |
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5 | 5 | 2021年8月19日 |
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6 | 6 | 地獄が終わり、地獄が始まった日。 |
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8 | 8 | あんな終わり方は一番有ってほしくなかった。 |
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9 | 9 | せめて…せっかく再会したのだから、もっと話したかった…いや、傍で手を繋ぐだけでも良かった。 |
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10 | 10 | 届かなかった手と、どんどん強くなる凍えるような寒さ、あの女の嗤い声を思い出す度に震えが止まらない。 |
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11 | 11 | 腰にはあの女が居た…誰か…■■…助けて…怖い… |
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13 | 13 | 徘徊していたら、人気の無い廃墟で怪我をした男性を見付けた。 |
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14 | 14 | 結構な大怪我だったけど、偶然自分の知り合いだと名乗る男と共に近くの病院へ駆け込む、機能していたので彼は一命を取り止めた。 |
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15 | 15 | 奇跡だって医者も驚いていたし、自分自身も安堵したのを覚えている。 |
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16 | 16 | 医師に指摘されて今さら気付いたけど、彼らは自分と同じドッグタグを下げていた。 |
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17 | 17 | その時、同じタワーマンションに住んでいる事を知った。 |
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18 | 18 | 怪我をしていた男はその後直ぐに完治したものの、記憶が無いのも有ってほっとけないので、自分の部屋に同居する事になった。 |
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19 | 19 | 今は、彼らに話を合わせる事が賢明だろう… |
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20 | 20 | |
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21 | 21 | 2021年8月20日 |
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23 | 23 | 『なんでもない日、おめでとう!ヒャッハー!』 |
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24 | 24 | |
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25 | 25 | …◼️◼️なら、そう言って自由を謳歌するのだろうか?と、ふと思う。 |
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26 | 26 | 自分には無理だった…何かしないと壊れてしまいそうだった。 |
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28 | 28 | …就職活動を始めた。 |
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30 | 30 | 知らない人に声をかけられた。 |
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31 | 31 | 就職先を探しているんだろ?と言われ、「はい」ととっさに答えてしまった…藁にもすがる思いだったのを覚えている。 |
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33 | 33 | 紙に書いてある場所にはプレハブと…若い執事を引き連れた少女。 |
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34 | 34 | 一抹の不安がよぎった…初日から銃口を向けられた訳だが… |
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36 | 36 | 2021年8月◼️◼️日 |
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37 | 37 | 同じタワーマンションに住んでいる男に現状を把握するため、話をする事にした。 |
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38 | 38 | 記憶のすり合わせも兼ねて。 |
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39 | 39 | あまり彼の部屋には入りたくない、そんな気持ちが少しした…理由は直ぐに分かったが、話しが長くなるので内容は伏せる…ただ、悪いヤツでは無いことだけは分かった。 |
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40 | 40 | 彼は元同僚で相棒、で、同居人は勤めていた会社の社長だったらしい…記憶が無くて良かったと思う反面、戻ったら…と思うと恐ろしさを感じた。 |
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41 | 41 | …お陰で、記憶の誤差が緩和した。 |
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43 | 43 | 2021年8月◼️◼️日 |
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44 | 44 | 自炊生活が始まった…。 |
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46 | 46 | 流石に元相棒にずっと作って貰うわけにもいかない、彼は好きでやっているだけだから気にしないでと言っていたが…気にする。 |
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48 | 48 | 心臓が止まっている…いや、厳密に言うと無いのだが、食べなければ《鋼》が受肉が出来ず、体の構築を維持出来ずに崩れてしまうのだ。 |
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49 | 49 | …死活問題である。 |
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50 | 50 | ついでに同居人にも食事が必要だ。 |
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51 | 51 | …幸い、食材も有るし、手袋や包帯、衣服のお陰で体質が食材に影響する事は無いだろう…意思を込めなければの話だが。 |
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53 | 53 | 何となく体は記憶しているが…不安なので、元相棒に手解きを受けた…余計な手解きも受けたが… |
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55 | 55 | 2021年8月◼️◼️日 |
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56 | 56 | ◼️◼️が居ないかと、海岸を散策中に妹を見付けた。 |
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57 | 57 | 記憶に一部、障害が有るようだった。 |
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58 | 58 | 自分を認識出来ないらしい。 |
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59 | 59 | 今の自身の状況では…まぁ仕方がないと思うことにし、『あのときの事は事故だ』と、言い聞かせ、一旦落ち着かせる事に成功した。 |
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60 | 60 | 嘘を付き続けるのは正直…ツラい… |
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62 | 62 | 2021年9月◼️◼️日 |
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63 | 63 | 殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと |
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65 | 65 | …そう言ってまた今日が来た |
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67 | 67 | 腕の傷が無くなってしまうのにももう慣れた |
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69 | 69 | 2021年10月31日 |
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70 | 70 | 人の好意を始めて感じる事が出来た気がした。 |
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71 | 71 | コレが、恋…なのだろうか?分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない |
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73 | 73 | また、腕の傷が残らない事に安堵し、絶望した |
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75 | 75 | 2021年12月◼️◼️日 |
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76 | 76 | 違った違った違った違った違った違った違った違った違った違った違った |
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78 | 78 | 痛みだけが安らぎをくれる、残らないのに、心の傷だけが増えていく。 |
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79 | 79 | |
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80 | 80 | ここは地獄だ… |
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82 | 82 | 2022年1月5日 |
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83 | 83 | 胸が締め付けられる思いをした。 |
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84 | 84 | 始めてでよく分からない。顔をまともに見れなかった。失礼なのは分かっている。この感情が、この感覚が名状しがたくて混乱している。分からない未知の領域に不安と恐怖が込み上げた。 |
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85 | 85 | |
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86 | 86 | 2022年3月24日 |
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87 | 87 | 隠し部屋と通路を見付けた、何故こんな場所が有るんだろう? |
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88 | 88 | 通路の先にはエレベーターが有ったが、怖くて引き下がってしまった。 |
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89 | 89 | 部屋には◼️◼️のノートPCと書物が有ったので、中身を見た。 |
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90 | 90 | どちらも良いものではなかった。 |
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91 | 91 | 特に、ノートPCだ。中身は殆ど何も入っていない…もしくは事前に消したのかもしれないが、パスワードが掛かっているファイルが一つだけ残されていた。 |
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92 | 92 | パスワードは家族全員が揃っている最初で最後の日だった…、内容は◼️◼️の日記。 |
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93 | 93 | 殺そうとしたけど殺せなかった理由が分かってしまった、分かりたくもなかった。 |
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95 | 95 | 私の行動などお見通しだったのだろう、◼️◼️はあえて残したんだ。 |
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97 | 97 | 気分が悪くなり、妹に押し付けてしまった私はクズ以下なのかもしれない。 |
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98 | 98 | |
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99 | 99 | 私は孤独だと思い知らされた。私だけが孤独だ。 |
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100 | 100 | また、腕の傷が残らない事に安堵し、絶望した。 |
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101 | 101 | |
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102 | 102 | 2022年4月23日 |
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103 | | 見とれてしまっていた…只タダそれだけだ。 |
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| 103 | 緑色の髪をなびかせ、闊歩する姿に見とれてしまっていた…只タダそれだけだ。 |
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104 | 104 | 声もろくにかけられず逃げてしまい、まるでストーカーだと、自身を嗤ってしまった。 |
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106 | | 汚れた薄汚いクズの私に、声をかける資格はきっと無い… |
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| 106 | 汚れた薄汚いクズの私に、声をかける資格はきっと無い…彼女は高嶺の花なのだから… |
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107 | 107 | |
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108 | 108 | 2022年5月9日 |
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109 | 109 | 居場所だけは確定した。 |
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110 | 110 | きっと平安だ、あの女から取り戻すチャンスがようやく来たんだ。 |
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111 | 111 | 次はしくじらない、捕まえて聞き出さねばならない、絶対に。 |
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113 | 113 | 待っていて、必ず迎えに行くから |
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