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いじめっ子の真実〜鉄馬視点〜
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俺には、護りたい人がいた。 彼女の為ならなんだってしたかった。 力をつけて、喧嘩も強くなって。 この拳は彼女の為だけに使おうと、そう決めていた。 誰にでもあるような正義感。 この想いが仇になる日が来るなんて、思ってもいなかった。 【いじめっ子の真実~鉄馬の場合~】 隣のクラスでいじめが起きている。 そんな噂が俺の耳に届いたのは、入学式から僅か三日後のことだった。 最初はくだらないと思った。 どうせ集団で力を誇示するやり方でしか威厳を保てない、そんな奴らの集まりだろう。 標的にされた奴は可哀想だが、俺には関係無い。 彼女にさえ害が無ければどうでもいい。 当時はそう考えていた。 同じクラスになった彼女。 一目惚れだった。 小学校の時だ。 勉強も運動も出来て見た目も可愛い彼女は、学年のアイドルだった。 対して幼馴染みの宗田と二人でつるむ事の多かった俺は、不良コンビと呼ばれ恐れられていて。 自然と増える単独行動。 広まる対の狼の通り名。 彼女だけだった。 俺達とも分け隔て無く付き合ってくれたのは。 同じ中学に来て、同じクラスになって。 新しい環境になっても無防備なままの彼女を、俺が支えてやりたかった。 彼女の無意識の優しさに、俺が救われたように。 奴に誘われたのも、そんな時だった。 いじめの主犯、堺晃。 そいつから語られたのは、いじめられっ子の本性。 その子の名前は栗花落澪。 彼女をいじめていたことがあるらしい。 俺は真っ先に否定した。 小学校での彼女はいつも明るかったし、休み時間はいつも俺達と一緒に居た。 第一栗花落なんて珍しい名字、学年名簿でも見た事がない。 嘘を吐いていると思った。 けれどその考えもすぐに揺らいだ。 この後のそいつの言葉によって。 『プライベートまでは知らないだろ?』 俺の気持ちを誰に聞いたのだろう。 そいつは自信満々に言って意地悪く笑った。 だから俺は本人に聞いた。 そしたら彼女もそれを認めた。 公園で偶然会って仲良くなって、休日には一緒に遊ぶようになって、だけど1ヶ月経ったくらいから段々……。 つまりこういうことだ。 彼女を信用させておいて、しまいにゃ裏切って傷つけたと。 今思えば不自然な点はいくつもあった。 彼女が俺と目を合わせなかったこと。 彼女が小刻みに震えていたこと。 そもそもこんな確認ができたのも、彼女が俺を待っていたからだ。 いつも一緒にいる女友達がいなかった。 多分、きっと……彼女も脅されていた。 わかりやすいサインもあったのに、彼女は彼女なりに伝えてくれていたのに。 俺はそれに、気づけなかった。 晃の言葉を鵜呑みにして。 彼女の為と言い訳して。 いじめっ子達に加担してしまった。 彼女と同じ痛みを、わからせてやりたかった。 だが、三学期の終わり頃だろうか。 俺はようやく違和感に気づき始めた。 ただの復讐にしてはあまりにしつこく、内容的にも行きすぎているのではないかということ。 そして、集まったいじめっ子一人一人が、違う理由を持っていたことだ。 初めは自分の目的以外に興味は無く、他人と接点を持つことはしなかった。 心変わりしたのはいじめっ子の一人、小林夏輝の一言がきっかけだ。 『あんたも、脅されたの?』 たまたま晃が近くにいなかった故の問いだった。 小林はいつも晃の傍に居るから。 まるで見張られているかのように。 俺の反応から違うと判断したのだろう、慌てて口止めをしてくる彼の様子が、あの日の彼女と被って。 それ以来なるべく皆と接点を持つようにしてみると、矛盾はあっさり見つかった。 目的が違うのは俺だけだ。 みんな晃を恐れているように見えた。 二年になって、メンバーに宗田が増えて。 だが常に傍観者の立場を崩さない宗田に、思い切って晃への疑念をぶつけてみたところ、宗田は楽しげな表情を崩さないまま言った。 『狐は誰だろうな?』 宗田はなにか知っている。 同時に俺の中での疑いが、確信に変わった瞬間だった。 だとしたら嘘をついた彼女も……。 だがやめさせるには証拠が無い。 気付けば学年全員が晃の味方。 俺一人が抜けるのは簡単だが、ここまで関わってしまったんだ、そんな薄情なことはできない。 そしたら宗田は更に続けた。 『考えがある。 俺に任せとけ』 宗田もまた、あの日の晃と同じ。 自信に満ちた目をしていた。 だから任せることにした。 いつも通りに振る舞い続け、繰り返すこと数ヵ月。 行動に出たのは、澪自身だった。 その傍には不敵に笑う宗田の姿。 ああ、なるほど。 そういうことか。 いじめられっ子は、ほんとは強い奴だった。 一瞬で、気に入ってしまった。 ああ、こいつなら友達としてやっていけるかもしれない。 宗田も同じ気持ちみたいだし。 護る対象を増やしてみるのも、たまにはいいもんだろう。 対の狼を魅了した小さな子猫。 可愛くも勇敢なその子猫は、今日も元気に鳴いている。 自分が護られていることにも気づかぬまま。 取り戻した笑顔は、壊れた世界を平和へと導いていく。 今の俺にできる精一杯の償い。 これが俺、鉄馬の真実。
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