PBWめも
花よりも
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「すごーい、満開だぁー!」 ひらり、ふわり。 僕の隣から離れた君の、薄紅に彩られた軽やかなステップ。 風が運ぶ甘い香りは、果たしてどちらのものだろうか。 「お花見、間に合ってよかったねー。皆も来ればよかったのに」 「夏輝と宗田が、赤点、やったからなー。 ほんとは澪が教える筈だったんだろー? 鉄馬と晃が代わってくれたけど」 「だってお花見は今だけじゃん! お花見というか散歩だけど……勉強はいつでもできるのに」 「まぁ……そもそも皆、花に興味持つタイプでも無いしなー」 「そうだけどぉ……こんなに綺麗なのになぁ……」 半分ほんとで、半分嘘。 皆きっと、本物の花には興味が無い。 夏輝は好きって言うかもだけど、理由はわかりきってる。 皆同じだから。 ほんの少しだけ、夏輝の方が素直なだけ。 本物には興味ない。 愛されているのは、別の花。 「諒太君もだよね」 「え?」 「好きじゃないでしょ、桜とか。 花より団子だもんねー、屋台とかあったらすぐ飛んで行っちゃいそう。 焼き鳥とか、じゃがバターとか?」 くすくすと笑う君。 きっとなにもわかっていない。 君が好きだと言ったものだから、好きじゃない人なんている筈ないのに。 桜並木に映える鮮やかな笑顔が、瞼の裏に焼き付けられて。 歌を奏でるような高い声が、鼓膜を揺らし心を攫う。 この世界にあるどの色よりも、儚く綺麗な琥珀色。 「好きだよ」 「あはは、知ってるよ。 どこかに屋台あればいいんだけどなー……まだお腹もちそう? 途中で食べ物やさんあったら寄っていこうか! 僕もお腹空いてきたし」 ちがう、そうじゃない。 そうじゃないんだ。 伝えたい言葉も、頭の中を行く宛てなく反響するだけ。 わかってるから。 君がいつも見ている人も。 それが僕じゃないことも。 だから、言えない。 言わない。 この想いは、僕だけの秘密。 「あっ、お茶屋さんだって。寄っていこうよ」 「そうだなー」 「なに食べよう……あっ、このパフェ美味しそう! ねっ諒太君、ほら!」 「あ、ほんとだぁ……澪、これ、結構デカいけど、一人で食べきれるかー?」 「だーいじょうぶ、一緒に食べればいいんだよ。 どうせ諒太君いっぱい食べるんだから、半分こしよ。好きでしょ?」 「……うん」 舞い落ちてくる花びらが、ふわりと澪の髪を掠めて地に落ちる。 満開の桜達も、君の笑顔の前では霞むようで。 世界にただ一輪の花。 皆に護られながら、ただ一人を想い一途に咲く可憐な花。 そんな花だからこそ……僕はきっと、惹かれたのだろう。 もしも伝えてしまったら、もう僕の前では、咲いてくれなくなるのだろうか。 それとも優しい君だから、僕に寄り添い枯れていくのだろうか。 自分の想いさえ諦めて。 そうなれば僕は、僕自身を許せなくなる。 ……皆に怒られちゃうし。 護りたい花。 愛した華。 他の誰かを、愛する人。 どんなに甘いお菓子より どんなに美しい花よりも 僕は君が―― 「だいすき」
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