(仮)

作成日時: 2020/01/08 21:35:43

●桜舞う名湯と黒き蝶

「お前たち、仕事の時間よ」

 宿に着く直前、緑川・小夜(蝶であり蜘蛛であり・f23337)は【蝶の崇拝者達】により呼び出した先代からの黒蝶の部下たちを呼び出して仕事を始める。先の戦争の遺物などがあっては小夜の本業が差し支える可能性がある。サクラミラージュで活動する盗賊『黒蝶』にとっても今回の一件は見過ごせなかった。

 部下たちに荷物を持たせ、まるで地方の成金が帝都に温泉旅行に来たかの様に振る舞い受付を通過する。どうやら今回の一件に必要なものは明晰な頭脳ではなく人手。グラッジ弾の関係者が複数人いる可能性がある以上人海戦術をとるのが最も効率がいいということになる。

「首になにかを巻いている人へ手当たり次第に声を掛けなさい。怪しい動きをしたら顔を覚えておくように。それと何かを隠せそうな場所があったらそこも調べなさい」

 食堂で御萩と緑茶を味わいながら小夜は部下へと指示を飛ばす。その言葉に従い部下たちは手当たり次第に宿の中を捜索する。


 小夜がいくつかの御萩と数杯の緑茶を飲み終わったころ。小夜は一旦部下たちを今夜の宿である部屋に集合させた。もちろんそれは部下たちからの報告を聞き届けるため。

「ふむふむ、なるほどね……」

 部下たちからの報告によれば
 他の猟兵たちの言う通り首のナニカを隠している者は数名確認された。
 宿の至る所にある隠し収納には以前に使用した形跡が見受けられるがここ数日は使われていない。

 「まだ準備中だったみたいね。これなら先手を打てそうだわ」

 恐らく青年たちはここでグラッジ弾の取引を行う予定だったのだろう。湯治客に紛れ込み宿の隠された収納で物のやり取りをする。店員たちの反応からして収納のことを知っているのも極一部だったようだ。

「さぁ、幕引きといきましょう」

 小夜は部下たちと共に関係者と思わしき青年たちの元へと足を運ぶ。



 しかし宿に青年たちの姿はなく、あったのは『幻朧戦線』そう刻印された一丁の拳銃だけだった。