檪 朱希 裏設定・過去等

作成日時: 2020/08/28 22:09:04
🦋蝶の傷跡について。
蝶の傷跡は、異能「破滅導く深淵の蝶」によるもの。
単体では非常に弱く、脅威にすらならないが、「宿主」に寄生することで徐々に真価を発揮する。
ただ、宿主は誰彼構わずというわけではなく、強い「心の傷」があり、一度でも世界に絶望したことがある場合に宿れる。
朱希の場合、「村人全員から存在を否定され、常に人として扱われない傷」から認められた。
※ハサミに関するトラウマは、怪異が宿った後の後天的なもの。


🦋
【宿敵】(現状予定)
・先代蝶の宿主「アゲハ」
・「破滅導く深淵の蝶」
・切り裂き研究員


🦋過去

私は生まれつき、右眼に赤い、赤い眼を持っていた。
髪も黒髪に赤が混じった、周りと違う黒と赤。

──なんということだ……

──悪魔だ……悪魔の子だ!!

──殺せ! 母親諸共殺してしまえば村は救われる!

元々、村では独自の思想を持って生きていた。
その人達にとって、突如として起きた困惑と動揺。
誰が言い始めたのか……悪魔、その一言から、私の人生は幕を開ける……


ダークセイヴァー【星灯の村】。
この村では、子供は神から賜る神聖な存在であり、象徴として大切にされていた。
特に、村長の子供である私は……一層皆から期待を受けていた。

──神より賜りし星、赤く染まる時。

──世界は、破滅へと誘われるだろう。

いつからそんな話が浸透していたのか、今となっては分からない。
けれど、それが村の、予言者からの言い伝えだった。

母親は、私が産まれた時に殺され、
父親は、母が亡くなったことや、私が忌み子、悪魔の子とされたことから私を避け、心を病んでしまった。
幸いと言うべきか、子供である私は……言われはともかく神から授かったのだからと、赤子の頃は協会の人に渋々預けられて育つ。

立って歩けるようになってから、家に帰されて父親と再会するも、私を他人として、家から追い出し続けるようになった。時には強引に、暴力を振るって。

助けを求めた。周りの人々に。
けれど、誰も手を差し伸べるどころか、私を『存在しないもの』として見て見ぬふりをする。
泣き声が煩いと、石や棒を投げてくる人はいた。
なるべく泣かずに、勇気を出して話しかけてみることもした。けれど、返ってきたのは平手打ちや心無い言葉達。

『悪魔の子にやるものなんて! なんて忌々しい!』
『さっさとくたばっちまえ!』

徐々に衰弱していき、死を覚悟していた。



そんなある時。
差し伸べられた手があった。

「君は、確かこの村の……」

白髪で細身の男性。特徴があるとするなら、白衣を来ている事、優しそうな目。私と違う、両目とも黒。
彼は、研究者だった。世界を脅かす吸血鬼やオブリビオンに対抗する力をダークセイヴァーで作り出そうとする、研究所の1人。

村の信仰や言い伝え等の噂を聞き、やってきたという。

何も言葉を発さない衰弱した私を見て、村の近くにある仮の研究施設へと保護。
父親代わりとして、暫くの間は寝る所や食事、ある程度の…それでいて前と違う温かな生活を送ることが出来た。

僅かな間の、幸せな時間。

ある日、その人からオブリビオンという化け物の事を聞かされ、その対抗手段としての力を得る手術を受けないか……と伝えられた。
ただ、その力は開発段階であることや、手術の時に命に関わる危険性もある。
私の意志を尊重するけれど、どうするか、と。
本当は、私にこんな事をさせたくないらしい。進言したのは、教会の人や私の父親だったという。

とても迷った。……でも。
こんな私でも、誰かの役に立てるかもしれない。
そう思って、強化人間になることにした。

それからは、村の近くに建てられた薄暗い施設に入ることになる。
助けてくれた研究員の人とは全然違う人達も沢山で、中には私を見て笑う人もいた。
可哀想に、と。


施設の子供部屋らしい所に行くと、私の他にも、一緒に来たのだろう子供達がいた。
でも、彼等は震えていた。聞けば、無理やり連れてこられたと言う。研究員の1人に。
後でその事を、助けてくれた人に話した。
その人はとても驚いて、分かったよ、子供達のケアと無理にしなくて良いようにすると約束してくれた。

それから、一週間程経ったある時。
子供達が段々と居なくなっていた。研究員の1人に子供達の居場所を聞くと、
怖いほどの笑顔を浮かべて、案内しようと言い出した。
薄暗い施設の、更に奥。
扉を開いた先、窓からは村の教会が見える部屋。
ちゃんと子供達がいた。……動かなくなっている、子供達が。

何でと聞くより先に、右首筋に何かを注射される。痛い。逃げようとする手を掴まれ、首輪をつけられて何かの機材の近くに連れていかれた。
何をするのだろう? よく見ると、傍らに何人か教会関係の人がいる。
怖い、誰か──!

そう思っていた瞬間、勢いよく扉の開く音。勢いよく入って来た人が、今もなお笑みを浮かべる研究員に対して抗議している。
子供達になんてことを、とか、その子に投与するのは安全性を確かめてからと言ったはずだ、とか……
そう、私を助けてくれた研究員の人だ。
対して、笑顔の研究員は平然と言ってのける。
安全性は確かめた。その子供達も使って、教会の人達にもこの村の物語(おはなし)のことも聞いて私は理解したのだ、我々がこの村で見つけたものは、使いようによってオブリビオンを倒すすべとなると……。

助けてくれた人は、私を助けようと一目散に向かった。
けれど、教会の人達が押さえつける。
数人がかりで押さえつけられた研究員さんは、必ず助ける、と私に安心させようと必死で。
けれど、いつの間にか取り付けられた機械にスイッチが入って、首元から電流が流れ、全身が熱くなり、息苦しくなる。

視界は白くかすんで、けれど、だんだん『音』だけ聞こえてきて……



――苦しい。憎い。悲しい。もう、嫌だ……


誰かの、声……


――どうして、こんなことになったの……


女の子の、声……?
聞いていると、その子の感情と入り混じったようになる。
幻か、何か分からないけれど……目の前で【助けてくれた人】が【無残にハサミらしいもので刻まれて、赤い色を広げ、彼は悲痛な叫びをあげている】……
嫌だ……いやだ……

――「嫌……やめて、やめて!! お願いだから、もうやめて!! どうして! 何も悪いことなんてしていないのに!!」


私の声か、聞こえた少女の声で叫んでいるのかは分からない。
感情が、一緒になる。
胸が苦しい。叫ぶ喉が痛い。


――「お願い!! 言うことを聞くから!! その人だけは殺さないで!!」


叫んでいるのかもわからないけれど、それも空しく視界が赤く染まっていく気がして。


――カナシイ、ニクイ、ツライ、イタイ。


私じゃない"何か"も呟いている。
私もその感情でいっぱいだった。


――ひとは、いつもそうだ。じぶんのために、たいせつなひとたちを、へいきでうばいさるんだ。


少女の声が響く。
その時、不意に視界がクリアになった。

しゃきん、ハサミのような音。
助けてくれた人は、赤く、朱く、あかく染まっていたところに、とどめと言わんばかりに首筋の……頸動脈を――


――「やめてええええぇぇぇぇぇ!!!!!」


嫌だ。やめて。その『音』を。嫌だ。やめて。やめて。
わたしの、わたしのたいせつな。

「□□□□……」

動かないはずのその人の『音』が、ノイズで聞こえた気がした。
ノイズが聞こえたと同時。
今度は、怒りが込み上げてきた。

――ゆるさ、ない

――許さない……許さないゆるさないゆるさないユルサナイ…………!!


そして、私の視界は暗転した。






🦋メタ
超ぐだぐた故、後程書き直す可能性大です。(初期で話した頃より変わってるかも……こちらが優先。)
ざっくりと。