ペインの過去

作成日時: 2019/04/23 00:18:32

盾時代

ーーーかつて、とある騎士がいた
ーーー騎士は、鉄の盾と槍を持って、戦場を駆け巡った
ーーー彼には、才能があり、運があった。故に、勇名を轟かせるのに、時間はかからなかった
ーーーそして、彼の名が轟くと共に、彼の装備もまた、有名になった
ーーー『頑丈であれば何でも良い。飾りも要らないから、出来ればその分安くして欲しい』
ーーーそんな注文で作られたものだなんて、誰も思わなかっただろう
ーーーたまに、花畑まで持って行かれて、それらを枕にして、昼寝するような、そんな騎士でもあった
ーーーそんな騎士も、結婚し、子どもが生まれ、引退し、寿命で死んだ
ーーー彼の子どもは、彼の装備であった盾と槍を、家宝として大事にした。時には、それを装備して戦場に向かった
ーーーそして、彼の子孫に、槍と盾は受け継がれていった
ーーー初代から数えて4代目は、少年だった
ーーーしかし、その才能は、子どものものじゃ無かった。きっと、後ほんの数年もあれば、初代を超えていた
ーーーでも、初陣が最悪だった
ーーー戦争に、絶対的な正しさは無かった。少年はそれを知り、それを止めようとしていた
ーーー惨劇、裏切りが、仲間割れが、或いはもっと恐ろしい何かが、互いを傷つけ、それでも、少年は諦めたくなかった
ーーーしかし、結局少年は捉えられた。そして、家宝であった槍と盾は奪われ、鉄くずにされた
ーーーその鉄くずを、誰かが拾い、融かし、……そして、それは作られた
ーーーちょうど、盾が作られて、99年目のことだった

指潰し時代

・主は拷問官の一族(ただし金儲け&趣味としていた)
・誕生後すぐに前の持ち主(少年騎士)の指を潰し、少年が死ぬまで外されなかった
・その後、少年の妹、父(先代)、母、祖母、祖父(先々代)と続く
・以降は、かなりぞんざいに扱われたり、逆に丁重に扱われて信仰の対象にされたりと、一貫していない
・酒樽の中に放り込まれて、一週間ほどそのままにされたことがある(アルコールで痛みを増大させるためだったらしい)
・極端に冷やされたり、逆に極端に熱せられたことがある(同じく痛みを増大させるため)
・塩に漬け込まれたり、電気を流されたり、毒を塗られたり……(略)
・信仰の対象にされたときは、ある程度丁重に扱われた以外、あまり変わらなかった
・なお、生まれてからしばらくしてから、他の拷問具の声が聞こえてきた。主に、諦めて受け入れるようにと言う、助言だった
・耐え続け100年目、指潰しとしての誕生日、ヤドリガミに覚醒した

ヤドリガミ時代

・ヤドリガミに覚醒後、すぐに持ち主だった一族を皆殺しにした
・それに、意味が無いのは知っていた。ただの八つ当たりのようなものだと、知っていた
・一族は、他の拷問具を使って、迎撃しに来た
・でも、100年分の怨念を、苦痛を宿した自分が、最終的に競り勝った
・けど、100年分の怨念は、そこで使い切った。そして、そのまま消えるはずだった
・それを、敵として戦った、拷問具達が止めた、ヤドリガミになれるほどの力と、今まで溜めた怨念を、自分に注いだ
・彼らは、責任を取って欲しいと言った。壊すこと無く、しかし、主を失った自分たちの、新たな主になれと
・彼らを壊さなかったのは、一応、助言を受けたのと、あくまで彼らに怨みは無かったから
・でも、本当は、断るつもりだった。自分の在る意味は、もう無いからと
・そんな自分に、彼らは在る意味を与えた。宿題を出し、その答えが出るまで、兄と姉として、見守ろうと
・そして、自分は猟兵になり、今ここに居る
・宿題は、まだまだ残っているけど……。生きる意味も、しっかり出来た
・今の自分は、幸せだよ