仮案帳-宵-

作成日時: 2020/03/12 00:30:04
花世さん/f11024

揺れる車中
あまやかな洋菓子
鮮やかな檸檬色の飲み物
どれも初めての事ばかり
然し心は漫ろなままに同卓の二人の話に耳傾ける

「戀をする」事は「春が来る」とよく喩えられるが
話に花咲く二人の表情は正しく春めくよう
徐に開いた己の手の平

溢れこぼれるあなたの言葉が
するりと心に落ちてくる

すり抜け散った春を見た
もう届かない春を識った
夜の夢と溶けた、身の裡の春に気付いた

呼ぶ声に、顔をあげる
求められた戀の話は未だ出来ない
代わりに浮かべた少しばかりの繕いの笑み

離れてしまうのは、寂しいものですよね…

零すのが精一杯
隠した手の平を強く握って
残した問いは心にだけ

─ねえ花世さん、
こんなにも

さみしいものなんですか