挿話

作成日時: 2019/09/07 02:57:33
色も移らぬそらの下
閉園のない遊園地くるくるまわる観覧車
夢のよにふわふわとどこか迷子の心地で
けれど繋ぐ手があるから確かなうつつと
そうなあ、きっとよく見えるよう
わらう片方の眸には映るかしら

落ちる光が煌めくのに目を細め
逆光になるあなたの輪郭を追う
近くなる黄昏に遠くなる地面に
遠く遠くへ行きそうで
橙に溶けてしまいそだから

迷子の手を繋ぎ直して
――うん、花世と僕は、夏をおくりに、きたのだから
一緒には行けないねえ
どちらとも言い聞かせるよに告げたなら
橙に染まりきらないあなたの色に綻んで

だからたしかに焼き付けて
過ぎ去っても忘れずにいて
遠ざかるのは黄昏か、小さな影か
ほんの刹那の永遠を今だけは、観覧車へと閉じ込めて