挿話

作成日時: 2019/08/31 02:29:51
花世/f11024と

やあ、便利な道具もあるものなあ
こんなに何でもできるのに
ないものばかりを、探すのね
終わらない季節を、願うのね
その歌はあなたにも聴こえるかしら
その陽炎を見る心地は、わかるかしら

影踏み歩く濃い緑の路を
焔のようにゆれる木漏れ日を
抜けたなら蜃気楼のように掻き消えそうな輪郭を
離さないよに真直ぐに、けれど眩さにまたたいて

そうね、目に焼き付いた、夏だこと

目を伏せて、開いて蝉の声も遠くなる
あなたの笑う影が黄昏に滲んでゆく

そか。
僕も、瞬くごとに光の躍る
今の花世を、見るのが好きよ

いつかは変わる、必ず終える
そうと思えば目を離せない、過行く今の恋しさを
けれど、だから、並ぶ夏の影を踏んで